研究課題
本研究では,骨格筋特異的にGRを欠損させた(GRmKO)マウスを,骨格筋タンパク質の分解を全身性に抑制されたモデルと捉え,GRmKOマウスを用いて,エネルギー代謝における骨格筋タンパク質代謝と脂肪組織脂質代謝の関連を明らかにすることを試み,以下の結果を得た.野生型マウスと比してGRmKOマウスでは骨格筋量が増加する一方,脂肪組織量は脂質分解関連遺伝子の発現増加により著明に減少していた.血中のアラニンなどのアミノ酸濃度は減少し,脂肪酸やケトン体、脂肪分解作用を有するホルモンFibroblast growth factor 21(FGF21)の濃度が増加していた.肝細胞培養液中のアラニン濃度を高くするとFGF21遺伝子発現が抑制されること,GRmKOマウスにアラニンを負荷すると血中FGF21濃度が低下することから,肝臓がアラニンシグナルをFGF21シグナルに変換し,骨格筋と脂肪組織をつなぐ役割を担うことがわかった.すなわち,GRmKOマウスの体組成は,骨格筋(Muscle)-肝臓(Liver)-脂肪組織(Adipose)連携(MLA軸)を介して「タンパク質利用と脂質利用のバランス制御機構」が変容し,エネルギー代謝系を脂質利用優位にトランスフォームさせた結果を反映していると考えられる.以上の結果などから,骨格筋はタンパク質分解に由来する血中アラニンにより,肝臓のFGF21発現量を調節して脂肪組織からの脂質動員量を規定していると結論づけた.さらに,MLA軸を利用した肥満治療薬開発基盤の構築のため,以下の進捗も得ている.マウス生体肝におけるFGF21遺伝子転写発現量をモニターする非侵襲的ルシフェラーゼアッセイ系を確立した.
1: 当初の計画以上に進展している
「骨格筋(Muscle)-肝臓(Liver)-脂肪組織(Adipose)」連携(MLA軸)が、個体のエネルギー代謝調節システムの基幹的要素であることを,個体レベルで世界に先駆け明らかにし,原著論文として発表した.さらに,その成果を利用したfirst-in-classの肥満治療薬開発基盤の構築にむけた研究が進行している.また,本研究成果より着想を得た,運動をはじめとした骨格筋タンパク質代謝に影響を与える様々なシグナルが,GR依存性の機構と干渉する分子機構の究明に関する研究も,国際共同研究強化課題として採択され,既に研究を開始している.
MLA軸を標的としたfirst-in-classの肥満治療薬開発基盤の構築に資するin vitro, in vivo実験系を駆使し,創薬シードとなる物質の同定を目指す.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 1件、 招待講演 12件) 備考 (2件)
Nature Communications
巻: 6 ページ: Article 6693
10.1038/ncomms7693
http://researchmap.jp/nshimizu/
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/Rheumatol/allergy/