研究実績の概要 |
妊娠期の軽度の甲状腺機能低下が、児の学習記憶に関わる中枢神経系遺伝子のエピゲノム変化を惹起し、またその変化が長期に記憶されることで将来の児の学習などの高次中枢神経系障害を来たすのではないかという仮説を証明するために、平成26年度は7-8週齢の雌マウスに対して、交配2週間前から出産まで甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬剤であるチアマゾール(MMI:0.025%)を経口投与し(M群)、その産仔を対照群(C群)からの産仔と比較検討した。出産時の母獣の血清サイロキシン濃度はC群で平均4.3μg/dL、M群で1.7μg/dLであり、MMIの抗甲状腺効果を確認した。一方産仔の血清遊離サイロキシン濃度は生後4週、14週において、C群、M群の産仔ともに平均約2.0ng/dLであり有意差を認めなかった。生後14週でopen field test, light-dark box test, elevated plus-maze test, rota-rod test, Morris’s water-maze testおよびfear-conditioning testなどの行動実験を行い、M群の産仔でC群と比較して有意な不安行動の減少および活動性の増加を確認した。また生後4週での大脳におけるbrain-derived neurotrophin factor (BDNF)およびBDNFの受容体であるtyrosine kinase receptor B(TrkB)遺伝子発現はM群の産仔でC群と比較して有意に低下していた。
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