研究実績の概要 |
妊娠期の軽度の甲状腺機能低下が、児の学習記憶に関わる中枢神経系遺伝子のエピゲノム変化を惹起し、またその変化が長期に記憶されることで将来の児の学習などの高次中枢神経系障害を来たすのではないかという仮説を証明するために、平成26年度は7-8週齢の雌マウスに対して、交配2週間前から出産まで甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬剤であるチアマゾール(MMI:0.025%)を経口投与し(M群)、その産仔を対照群(C群)からの産仔と比較検討した。生後14週でopen field test, light-dark box test, elevated plus-maze test, rota-rod test, Morris’s water-maze testおよびfear-conditioning testを行い、M群の産仔でC群と比較して有意な不安行動の減少および活動性の増加を確認した。また生後4週での大脳におけるbrain-derived neurotrophin factor (BDNF)およびBDNFの受容体であるtyrosine kinase receptor B(TrkB)遺伝子発現はM群の産仔でC群と比較して有意に低下していた。平成27年度は、神経活動に重要とされるBDNF遺伝子のエクソンIVの遺伝子発現と、プロモーター領域のCpGサイトを対象にバイサルファイトシークエンス法でDNAメチル化の程度を検討した。産仔は生後4週において海馬におけるBDNFエクソンⅣの遺伝子発現がM群において低下し、エクソンⅣのプロモーター領域のDNAメチル化が有意に増加していた(C群vs M群:6.5% vs 9.7%)。
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