研究課題/領域番号 |
26461379
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
須賀 英隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20569818)
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研究分担者 |
長崎 弘 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30420384)
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40203707) [辞退]
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50422770)
萩原 大輔 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (70710086)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 疾患特異的iPS細胞 |
研究実績の概要 |
平成26年度に樹立した疾患特異的iPS細胞(mFNDIiPS細胞)を用いて、長期維持培養を行った。これまでのFNDIマウスの検討で、マウス生体では、1ヶ月齢から電子顕微鏡で、2ヶ月齢から光学顕微鏡で小胞体内の封入体が観察され、時間経過と共に封入体が増大することが判明している。この特徴的な封入体がin vitroでも再現できるかどうかが重要なポイントと考えられる。従って、mFNDIiPS細胞からAVP細胞を分化させ(mFNDIiPS-AVP細胞)、mFNDIiPS-AVP細胞の長期培養でin vivo同様の封入体形成が観察できるかを検討した。 FNDIマウスでは脱水条件負荷によりAVP合成を亢進させる状態を3ヶ月間維持すると、多飲多尿の表現型が進行する。mFNDIiPS-AVP細胞の長期培養で、もし、封入体などの特徴的な構造が出現しない場合は、cAMPでAVP合成を亢進させたり、tunicamycinやthapsigarginで小胞体ストレスを亢進させることで、FNDIマウスの脱水条件と同じ状況を負荷し、AVP細胞への影響を検討する予定とした。 当初、mFNDIiPS細胞の維持培養に、従来我々が用いていたマウスES細胞とは異なる性質があったため、mFNDIiPS細胞用に最適化した方法を開発する必要があった。従来の接着培養による維持を、浮遊による立体的な維持に変更することで、mFNDIiPS細胞でも良好に維持培養が可能になった。そこからAVP細胞への分化(mFNDIiPS-AVP細胞)にも成功した。別にあらかじめ検討しておいた長期培養法と組み合わせることで、mFNDIiPS-AVP細胞の中に封入体が時間経過と共に形成されることを確認した。人為的に小胞体ストレスを亢進させなくとも、疾患特異的iPS細胞から誘導したAVP細胞は自ずと封入体を形成することが判明し、疾患モデルとして優れた性質を示していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小胞体ストレスに伴う封入体をin vitroで再現するには、AVP産生細胞へ分化したニューロンを、長期に維持培養する必要がある。従来の、マウスES細胞からAVPニューロンへの分化法では、AVPへの分化は得られるものの、intactに観察できる期間が1週間程度という限界があった。本年はまず、この観察可能期間を長期化する技術開発を行った。3次元培養から平面培養への展開や、使用する細胞外マトリクス、あるいは培地組成の工夫により、従来1週間しか観察できなかった期間を、4週間以上へ延長することに成功した。この成果を平成28年度に発表する予定である。 次に、平成26年度に樹立した疾患特異的iPS細胞を用いて、AVPニューロンへの分化を行った。従来の分化法ではAVP産生細胞まで分化しなかったが、分化法を改良することで、マウスES細胞から従来法でAVPニューロンを分化させた場合とほぼ同じ効率で、疾患特異的iPS細胞から遺伝子変異AVPニューロンへの分化を達成した。 加えて、先に達成した長期培養法と組合せ、光学顕微鏡で小胞体内の封入体が観察されることを確認した。この小胞体内封入体は、FNDIモデルマウスの視床下部でも特徴的に見られる所見であり、なおかつ、小胞体ストレスの証拠である。今後、詳細な観察と、薬剤負荷などによる変化を観察していく。
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今後の研究の推進方策 |
FNDIマウスモデルではこれまでに、小胞体ストレスやオートファジーが表現型進行に関与していることが示唆されてきた。しかしながら、オートファジーと細胞死との関連、あるいはAVPニューロンが細胞死する経過など、細胞レベルでの詳細な検討は今後の課題である。 今回確立するin vitroモデルで、詳細な経時変化や、オートファジーの亢進もしくは抑制による条件検討など、動物モデルでは煩雑もしくは不可能な条件を検討し、病態の解明に利用する。 また、iPS細胞の増殖能を利用し、mFNDIiPS-AVP細胞を大量調整することで、治療薬のスクリーニングを行う。小胞体ストレスが関与するとされる神経変性疾患は多く存在し、抗アポトーシス薬、神経保護剤などそれらの疾患で用いられる治療薬について本実験系での効果を検討する。 以上の実験を通じ、マウス細胞を用いて視床下部の疾患特異的iPS細胞疾患モデルを確立する。別の課題にてヒトiPS細胞から視床下部ホルモン産生細胞への分化培養方法開発に取り組んでおり、将来それらを組み合わせて、ヒトにおける視床下部疾患in vitroモデル構築に展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が安く購入できたため
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次年度使用額の使用計画 |
印刷及び文献複写代 413円 切手代 500円
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