研究課題
代表者はこれまでに、Kcnq1遺伝子のイオンチャネル機能をコードするexonをネオマイシン耐性遺伝子で置換させた全身性Kcnq1欠損マウスを入手し、解析を行ってきた(PNAS 98:2526, 2001)。その結果、膵β細胞におけるKcnq1の発現量が減少してもインスリン分泌に差を認めないことが明らかとなった。そこでKcnq1ヘテロ欠損マウスをParent of originを明らかにするように、父親から変異を引き継いだ父方ヘテロ欠損マウス(PH)と母親から変異を引き継いだ母方ヘテロ欠損マウス(MH)とに区別して野生型マウス(WT)と比較してみた。すると、1)出生時および24週齢においてPH群のみ有意な膵β細胞量減少が認められた。2)24週齢で耐糖能を測定したところ、PH群のみ有意なインスリン分泌低下と高血糖を示した。3)膵島におけるKcnq1ot1の発現量が、3群間でPH群のみ有意に低下していた。4)Kcnq1遺伝子領域に存在する細胞周期調節因子Cdkn1cの発現量が、PH群の膵島においてのみ有意に亢進していた。4)PH群の膵島におけるCdkn1cプロモーター領域のヒストンメチル化が、他の2群と比して有意に低下していた。これまでに以上のことを明らかにしている。今後は、膵β細胞特異的Cdkn1cノックアウトマウスと交配させることによって、膵β細胞におけるCdkn1cの役割についてさらに深く検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の仮説を実証すべく実験を重ねているが、実験で得られる結果は期待通りのものである。ただし、本来ヒトの臨床データから始まった実験である以上、ヒトの2型糖尿病の病態に少しでも関連付けたいと考えているが、現時点ではできていない。どのような方法が可能か、今後検討を進めたいと考えている。
上記にも示したが、マウスで得られたデータをヒトに応用できるかについて検討を進めたいと考えている。しかしながらヒト膵島を入手するのは困難であることから、例えばKcnq1遺伝子のSNPが存在する2型糖尿病患者の病態を詳細に解析し、我々のKcnq1変異マウスと同様の病態を示すかについて検証したい。また、近年研究に使用されているヒト膵β細胞株を入手し、Kcnq1のSNPの有無による膵β細胞の機能やviabilityについても解析を行う予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 458 ページ: 681-686
10.1016/j.bbrc.2015.02.024.
Diabetes
巻: 63 ページ: 2996-3008
10.2337/db13-0970.