研究課題
前年度において、父方アリルにおけるKcnq1ot1 truncationマウスでは、膵β細胞量減少とそれに伴う耐糖能異常を呈することが明らかとなった。これは膵β細胞に細胞周期抑制因子であるp57が蓄積することによるものであることが明らかとなった。そこで今年度は、膵β細胞特異的p57ノックアウトマウスをKcnq1ot1 truncationマウスと交配し、膵β細胞におけるp57発現を低下させたマウスを作製した。このマウスでは膵β細胞量が回復し、耐糖能の改善も認められた事から、やはりp57の蓄積が膵β細胞不全を発症させたものと考えられた。研究代表者はこれまでに、高脂肪食負荷が膵β細胞に転写因子C/EBPβを蓄積させる事を明らかにしている。さらに、p57のプロモーターには転写因子C/EBPβの結合領域が存在する事も明らかにしている。そこで高脂肪食負荷Kcnq1ot1 truncationマウスを作製し、膵β細胞量の変化を確認したところ、野生型マウスでは高脂肪食負荷による代償性変化が著明であったのに対し、Kcnq1ot1 truncationマウスでは有意に変化率が減少していた。また、膵β細胞におけるp57の発現量増加が確認された。このことから、Kcnq1ot1が低下したマウスに高脂肪食を負荷すると、十分な代償性変化が起こらないことが明らかとなった。その原因として、細胞周期抑制因子p57の発現亢進が考えられた。日本人は欧米人と比べて肥満者の膵β細胞代償性過形成が起こりにくいことが報告されているが、本研究成果よりKcnq1遺伝子領域のエピジェネティックな変化が寄与している可能性が考えられた。
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The Journal of Nutrition
巻: 147 ページ: 52-60
10.3945/jn.116.231662.