研究課題/領域番号 |
26461383
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 講師 (30315080)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリアダイナミクス / オルガネラネットワーク / 小胞体ストレス / FGF21 / 肥満 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
エネルギー代謝におけるオルガネラネットワークの役割を明らかにする目的にて、ミトコンドリア(Mt)分裂を制御するDRP1を肝細胞特異的に欠損するマウス(Drp1LiKO)を作成し、以下①~③の研究を進めた。 ①肝臓におけるMtダイナミクス破綻による小胞体(ER)ストレス惹起機構の解明:Drp1LiKO)マウスに高脂肪食負荷をかけると著明なERストレスを引き起こす。マイクロアレイ解析を行った結果、Nupr1(P8), Atf3, Trb3, Asns, Chop等のERストレス応答遺伝子が著増していた。Drp1LiKOマウス肝ではPERK-eIF2a-Atf4経路が活性化されていることを明らかにした。 ②Mtダイナミクスを介する肝臓と筋肉・脂肪組織間連絡の機序解明:Drp1LiKOマウス肝臓ではERストレスが惹起されインスリン抵抗性が亢進するが、筋肉や褐色脂肪でのインスリン感受性が改善し、耐糖能が良好であり肥満抵抗性を示す。その機序として、ERK-eIF2a-Atf4経路の活性化によるFGF21の発現亢進を明らかにした。肝臓から分泌されるFGF21を介して、末梢組織のインスリン感受性亢進、脂肪燃焼が増加するものと考えられた。現在さらに神経を介する臓器間連関の可能性も探るため、肝臓の迷走神経切除実験を進めている。 ③肝Mtダイナミクスを介する臓器間連関を利用したメタボリックシンドロームの治療法確立に向けた基礎的検討:野生型マウスに対し、dnDrp1をハイドロダイナミクス法ならびに肝細胞特異的ナノキャリアーMENDを用いて導入し、耐糖能の改善効果を評価した。1回の投与により3日目で耐糖能の改善を認めたが、7日目ではその効果が消失した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の到達目標をほぼ達成できている。Drp1LiKOマウスでインスリン感受性亢進、高脂肪食負荷による肥満に抵抗性を示すメカニズムの一つとして、肝臓でのFGF21産生の増加を突き止めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従い研究を推進して行く。すなわち①ミトコンドリアダイナミクスの破綻によるERストレス惹起機構解明に向け、Drp1LiKOマウス初代肝細胞を用いた解析、肝細胞特異的Mff欠損マウスの表現型解析を行い、Drp1-Mffが関与するERストレス、FGF21発現の機構を明らかにする。②肝臓-筋肉・脂肪組織間連関の機序解明に向け、FGF21による筋肉、脂肪組織における代謝改善のメカニズムをさらに解析する。また迷走神経の関与も明らかにする。③肝ミトコンドリアダイナミクスを介する臓器間連関を利用したメタボリックシンドロームの治療法開発に向け、Drp1を標的として、siRNA, dn-cDNAのマウス肝臓への導入を行なう。1回の導入では十分な効果が見られなかったため、連続投与を行う。また脂肪肝モデルマウスに対して同様な実験を行い、効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の予定価格より納入価格を低く抑えることができたため若干の予算執行残が生じたが、ほぼ予定どおりの予算執行であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度請求額と合わせ、予定どおりの研究遂行のための経費として使用する。
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