研究課題
研究背景:バセドウ病(GD)は臨床的に最も頻度の高い自己免疫疾患である。GDは抗TSH受容体抗体(TRAb)が甲状腺を刺激するため甲状腺機能亢進症をきたす疾患である。GDにおいてHLAの関与は重要であり、HLA-DR3が最も大きな影響を及ぼす。TSH受容体(TSHR)ペプチドは抗原提示細胞においてHLA-DR分子と結合しヘルパーT細胞に提示され、B細胞からTRAbが産生される。しかし、GDやGD眼症の発症機構は未だ解明されていない。さらにGDの治療による緩解率は低く死亡例もあり、治療後の再発が多い。したがって、1940年代より新規治療法の開発が喫緊の課題である。本研究の目的は、その知見を基盤として、1) GDにおけるHLA-DR分子の役割に着目し、抗原提示機構を明らかにして、2) 抗原特異的免疫制御による治療法を開発することである。申請者はこれまで、GDにおけるTSHR抗原とHLA-DR結合モチーフを解明し、human TSHR 37(AA78-94):hTSHR37が重要なエピトープであることを証明した。次に、我々はhTSHR37に関する変異hTSHRペプチド:37mを作成しHLA-DR3TGマウスにおいてhTSHR37と37mを共に免疫した結果、B及びT細胞反応性抑制効果がみられた。また、hTSHR中のAサブユニット(AA1-289)をコードしたアデノウイルス:Ad-hTSHR289をHLA-DR3TGマウスに免疫することにより、TRAb/TSAb陽性及び甲状腺中毒症を確認した。次にAd-TSHR289の免疫前に抗CD25抗体を接種しTRAb陽性マウスの増加と甲状腺内リンパ球浸潤やGD眼症を認め、Treg除去によるGDの免疫応答増強効果と考えられた。次に、HLA-DR3TG-GDマウスに37mを投与し甲状腺中毒症とTRAb産生の抑制、脾臓細胞中のTreg数の増加を認め、すなわち、37mにより免疫が抑制され、治療効果が得られた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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