研究課題
免疫炎症反応は、肥満症や糖尿病の病態に関わることが解明されてきたが、詳細な機序はまだ不明である。本研究では、免疫プロテアソームという蛋白質分解酵素が、肥満・糖尿病などの炎症に関与しているのではないかという仮説の下、免疫プロテアソームを欠損したマウスを利用して、その役割を解明することを目的としている。平成26年度は、マウスの免疫プロテアソームのサブユニットの一つであるLMP7を欠損させると、抗炎症作用を介して、高脂肪食負荷による肥満に抵抗性を示し、耐糖能やインスリン感受性の改善がみられることなどを論文にまとめ、投稿中の段階に至った。また、免疫プロテアソームの別のサブユニットであるLMP2の欠損マウスについても同様の実験を行っているが、繁殖上の問題で時間がかかっている。糖尿病病態の慢性炎症への免疫プロテアソームの関与を検討するために、低用量ストレプトゾトシン投与モデルを利用して、その役割について解析を始めた。LMP7欠損マウスでは、ストレプトゾトシン投与による血糖値上昇が、炎症抑制により改善されるのではという予想に反して悪化することがわかった。悪化する原因として免疫細胞の早期浸潤が考えられたが、免疫染色やフローサイトメトリーによる解析でその仮説は当てはまらない知見を得ている。LMP7の選択的阻害剤を使用した細胞レベルでの研究を進めるために、ラ氏島細胞株MIN-6細胞の供与を受け、培養を始めた。
2: おおむね順調に進展している
肥満モデルは投稿に至った。糖尿病モデルについて、予想外の結果ではあったが、その結果を利用して、その作用機序を血糖値制御のシステムの理解に役立てるつもりである。
低用量ストレプトゾトシン投与の慢性炎症型糖尿病モデルにおいて、炎症及び炎症以外の免疫プロテアソームの役割を明らかにするため、骨髄移植モデルを利用する。ラ氏島細胞株MIN-6細胞を利用して、細胞レベルでの解析を進める。以上のように内分泌・代謝における免疫プロテアソームの役割を引き続き解析する予定である。
論文がアクセプトされるまで、投稿費用を繰り越し分に回した。また、ELISAなどの一部の実験を節約して行うために、サンプルをある程度貯めてから一度に測定を行う計画にしたので、その分の費用も繰り越し分に回した。
投稿費用やELISAキット購入に充てる。
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