研究課題
本研究では、肥満・糖尿病の病態における免疫プロテアソームという蛋白質分解酵素の役割を解明することを目的としている。平成27年度は、マウスの免疫プロテアソームのサブユニットの一つであるLMP7の欠損が、高脂肪食による誘導される肥満や高血糖・高脂血症・耐糖能・インスリン抵抗性を改善し、脂肪組織での炎症反応を抑制することを論文(Scientific Reports, 5: 15883)に発表した。また、この内容を平成27年10月の肥満学会や平成28年4月の内分泌学会でも報告した。LMP2の欠損マウスについても同様の実験を行っているが、繁殖上の問題で時間がかかっている。LMP7欠損マウスでの脂肪細胞分化が抑制されることを見出したため、その続きとして、脂肪前駆細胞株3T3-L1細胞の脂肪細胞分化の系とLMP7の選択的阻害剤のONX-0914を利用し、脂肪細胞分化におけるLMP7の役割を解析している。脂肪細胞分化に関わる転写因子群の発現を測定し、LMP7阻害の効果を検討し、いくつかの候補を見出した。そして、LMP7の役割を分子機能的に解析するために、LMP7の高発現もしくは、ノックダウン、さらに変異型LMP7を発現するレンチウイルスを作製し始めた。現在、一部は作製済みである。今後は、これらのウイルスを使用し、より詳細な機構を解析する予定である。糖尿病病態の慢性炎症への免疫プロテアソームの関与を検討するために、低用量ストレプトゾトシン投与モデルを利用して、その役割について解析を始めたが、このモデルではLMP7欠損により糖尿病が悪化することがわかった。先に記載したレンチウイルスを利用して、LMP7を恒常的に発現しているラ氏島細胞株MIN-6細胞のLMP7をノックダウンしたり、さらには高発現させたりして、インスリン産生能などを検討し、LMP7の役割を解析する予定である。
3: やや遅れている
肥満モデルは論文が出て、さらにその発展の研究の脂肪細胞分化の研究に進めた。糖尿病モデルについて、予想外の結果ではあったが、レンチウイルスの系を利用して、その作用機序を検討し、血糖値制御のシステムの理解に役立てるつもりである。レンチウイルスの作製に少し時間がかかっている。
脂肪前駆細胞株3T3-L1、線維芽細胞株NIH-3T3細胞、ラ氏島細胞株MIN-6細胞を利用して、脂肪細胞分化やインスリン産生の機構におけるLMP7の役割を細胞レベルで解析する。以上のように内分泌・代謝における免疫プロテアソームの役割を引き続き解析する予定である。
前回の繰り越し分をそのまま次の繰り越し分に回した。また、ELISAなどの一部の実験を節約して行うために、サンプルをある程度貯めてから一度に測定を行う計画にしたので、その分の費用も繰り越し分に回した。
論文投稿費用や試薬・ELISAキット購入に充てる
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
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