本研究で使用した抗肥満高耐糖能マウスは、グレリン遺伝子欠損マウスを作出する過程で偶発的に得られたマウスである。グレリン遺伝子のヘテロ欠損マウス同士を交配したときに、眼間が広く、鼻部の短い頭部形成に異常の見られる矮小雄マウスが一個体だけ生まれた。このような特徴的な外見だったことからC57BL/6Jマウスとの戻し交配をN12世代まで実施し、グレリン欠損の影響を完全に取り除いて遺伝的な背景がC57BL/6Jマウスに均一化されたコンジェニック系を樹立した。コンジェニック化されたマウスは外見的な異常形質をすべて引き継いでいたことから、何らかの遺伝子変異によってこれらの異常形質が誘導されていると考えられた。 そこで、遺伝子マッピング解析及び次世代シークエンシング解析を進め、変異が第16番染色体上にあることを前年度までに見いだし、本年度、1ヶ所の変異箇所を抽出することができた。すなわち、第16番染色体のCrebbp遺伝子でCTのTが欠損しているためにフレームシフトを起こしていることを明らかにした。今後、人為的にこの変異をC57BL/6Jマウスに導入し、本研究で使用した抗肥満高耐糖能マウスと同様の表現型が得られるかを確認することによって最終的に変異の原因遺伝子として同定する。 一方、抗肥満高耐糖能マウスは、安静時の血糖値が低い、糖負荷試験によって高い耐糖能を示す、高脂肪食を負荷してもほとんど肥満にならないなどの特徴をもつことを見いだしてきた。最終年度を含むPCRアレイによる網羅的解析から、このマウスではインスリン抵抗性に関する遺伝子のいくつかに発現変化が見られ、このため血糖値が低く維持されていることが示された。 このように、本研究の研究目的は概ね達成できたと考えられる。
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