研究課題
高リスク肺癌手術に対する周術期低用量ANP投与によって、術後早期再発抑制効果を見出し報告した。今年度は、外科手術侵襲モデルとしてLipopolysaccharide(LPS、1 mg/kg)静注投与後C57BL/6マウスを用いてANPの肺転移抑制効果とその機序を明らかにすることを目的とし、得られた結果は以下の通りである。LPS投与マウスにB16F10マウスメラノーマ細胞(2-5x105個/個体)を尾静注し、2週間後の血行性肺転移数を検討した。尾静注前日にANP(0.5γ)を充填したosmotic pumpを皮下埋没した。対照群と比較してLPS投与群では肺転移数は著増し、ANPによって有意に抑制された。LPSによってS100A9/A9-SAA-NFkB及びRhoのシグナル活性が認められ、肺血管内皮細胞における透過性変化及びE-selectinやその他の接着分子の発現亢進、血小板凝集等が肺転移促進の一因と考えられた。ルシフェラーゼ高発現メラノーマ細胞を用いて同様の検討を行ったところ、LPSによって尾静注24時間後の細胞生存数が増加し、ANPによって有意に抑制された。ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)に対するヒト肺癌細胞株A549細胞の接着性は、LPS処理において有意に増加し、ANP前投与によって抑制された。LPSで誘導されるHPAECの接着分子を検索しsiRNAによって抑制したところ、E-selectinを介したA549細胞接着が最も抑制された。ただHPAECでは発現しない接着分子もあり、in vitroによる検討の限界が認められた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究実施計画は、ほぼ予定通りに実施することができた。平成26年度にLPS刺激によるマウス肺転移およびHPAECへの癌細胞接着性を検討することができたため、速やかに今年度の研究に移行することができた。LPS投与による肺血管内皮細胞の転移誘導性に関わる遺伝子発現変化をマイクロアレイにて検討する予定であったが、CD31溶性肺血管内皮細胞の分離に伴い炎症性関連遺伝子が変化することが判明した。今後、分離過程の簡素化短時間化等の改善を行って、網羅的遺伝子発現解析を行う予定である。
現時点で当初の研究計画に大きな変更はなく、平成28年度の研究実施計画に沿って研究を進める。最終年度となるため、研究成果を速やかに論文報告し、学会等でも発信していく予定である。
当初の研究計画より早く実験及び解析結果を得ることが出来、予定経費より支出を抑えることが出来た。
次年度繰越金は、実験試薬や学会発表時の旅費に使用予定である。
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