研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞より発生するクローン性造血器腫瘍であり、貧血など造血不全状態を認めて高齢者に好発する予後不良ながんである。近年の網羅的なMDSの遺伝子変異解析によって、TET2、EZH2、ASXL1などエピゲノム制御遺伝子が高頻度に存在しており、MDS病態や疾患予後と密接に関連することが明らかになった。近年、70歳以上の健常高齢者の約5%にTET2やASXL1といったMDS同様の遺伝子変異(Founder mutation)が既に存在しており、疾患発症以前からクローナル造血(前MDS状態)があることが相次いで報告された。実際、クローナル造血のある高齢者のごく一部がMDSを発症するのであり、加齢に伴うMDS発症の仕組みは依然として不明である。こうした知見に基づき、申請者は、Tet2欠損マウスなどを用いたエピゲノム制御因子変異モデルを複数作製して、MDSの病態基盤を解明してきた(Muto T, et al. JEM 2013; Sashida G, et al. Nature Commun 2014; Wang C, et al. Blood 2014; Mochizuki-Kashio M, et al. Blood 2015)。本研究課題では、EZH2機能喪失型変異のMDS発症過程における役割を解明するために、Ezh2欠損マウスを用いていくつかの新規MDSまたMPNモデルを作製して、そのMDS幹細胞の発生と病態進展過程におけるエピゲノム状態を詳細に解析した。この研究の結果として、申請者はMDSのエピゲノム異常による病態基盤を解明する重要な研究実績をあげる事ができた(Sashida G, et al. JEM 2016; Hasegawa N, et al. Leukemia 2017)。
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