研究課題
血小板減少マウスとコントロールマウスにKBx/Nマウスの血清を注射して関節炎を惹起したところ、血小板減少マウスで有意に関節炎の程度が抑制されたとの報告がなされた。その報告では、血小板上コラーゲン受容体GPVIにより関節炎が増悪するとされていたが、私達は血小板上ポドプラニン受容体CLEC-2と関節内滑膜細胞に発現するポドプラニンの相互作用により関節炎が悪化するとの仮説を立てた。リウマチ患者との手術検体より分離培養した滑膜細胞に、リコンビナントCLEC-2で刺激したところ、滑膜細胞の増殖が促進し、IL-6と IL-8 の産生が増加した。以上より、滑膜細胞のポドプラニンとCLEC-2の結合は、炎症や増殖滑膜の産生を促進することがわかった。昨年度までに血小板特異的CLEC-2欠損骨髄キメラマウスと野生型キメラマウスに、KBx/Nマウスの血清を注射して関節炎を惹起したところ、CLEC-2欠損キメラで有意に関節炎の程度が抑制されていた。また、関節炎マウスにDMSOあるいはCLEC-2とポドプラニンの結合を抑制する低分子化合物を投与したところ、低分子化合物投与群で有意に関節炎の程度が抑制された。リウマチ患者では、血小板活性化に伴って生成される血漿 soluble CLEC-2 が、健常者に比べて有意に高値であった。以上より、関節炎に伴って透過性の亢進した血管から漏出した血小板の CLEC-2 と滑膜細胞のポドプラニンが結合することにより、炎症性サイトカインが産生され、滑膜細胞の増殖が促進されることにより、関節炎が増悪すると考えられた。CLEC-2とポドプラニンの結合を抑制する低分子化合物は、関節リウマチの新たな治療戦略となることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
血小板CLEC-2がリウマチの増悪因子となること、その機序の一端を明らかにできた。また、CLEC-2とポドプラニンの結合を抑制する低分子化合物が、関節炎の程度を有意に抑制することをマウスモデルで証明し、新たな治療戦略の道筋を示した。
CLEC-2によりポドプラニンを刺激することにより、滑膜細胞からIL-6, IL-8といった炎症性サイトカインが産生されることが mRNAレベルで確認できたが、蛋白レベルでもELISAでも確認する。同時に、関節炎マウスで血中IL-6, IL-8が上昇しているか、ELISAで確認する。またCLEC-2刺激により、リウマチ関節炎の際に骨破壊を促進するRANKLが、滑膜細胞で増加しないか検討するとともに、関節炎マウスの骨破壊の程度を組織学的に解析し、CLEC-2欠損キメラと野生型キメラで比較する。
見積もり価格よりも安価に購入できたため。
ELISAキット購入などに使用する。
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