研究実績の概要 |
(1) 生体の鉄代謝制御ホルモンであるヘプシジンのプロモーター制御下にGFPを発現する肝臓がん細胞株を作成し、これを活用したバイオアッセイによってヘプシジンの発現を抑制する化合物を複数同定した(Kawabata H, et al. Exp hematol 43: 404-413, 2015)。 (2) 貯蔵鉄のバイオマーカーであるフェリチンが造血系のどのような細胞にどういった機序で取り込まれるかについて、蛍光標識した遺伝子組み換えヒト・フェリチンを用いてフローサイトメトリーで解析した。その結果、赤芽球系細胞が特異的にHフェリチンを取り込むこと、その機序としてトランスフェリン受容体1が関わっていること、Hフェリチンの細胞への取り込みは、閾値以上のレベルのトランスフェリン受容体の発現が必要であることを見出した(Sakamoto S, Kawabata H, et al. PloS one 10: e0139915, 2015)。さらに、ヒト骨髄細胞を用いたコロニーアッセイで、Hフェリチンが赤芽球系のBFU-Eコロニーの形成を選択的に抑制することを見出した。 (3) TGFβスーパーファミリーに属するGDF15の血清濃度が骨髄線維症患者で極めて高い事、GDF15がヒトの赤芽球だけでなく巨核球にも発現すること、GDF15がin vitroおよびマウスのゼノグラフトを用いた系で、間葉系支持細胞の骨への分化を促すことを見出した(Uchiyama T, Kawabata H, et al. Cancer Med 4: 1558-1572, 2015)。GDF15の血清濃度が、貧血の重症度に比例して増加することも見出している。 (4) 遺伝性鉄過剰症の2家系について倫理委員会の承認と被験者の同意のもとで遺伝子検査を行い、それぞれ遺伝性ヘモクロマトーシス4型および遺伝性鉄芽球性貧血(XLSA)と診断し、病態についての解析を行った(2編の症例報告、in press)。
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