研究課題/領域番号 |
26461403
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 恒 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20705214)
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研究分担者 |
柏木 浩和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432535)
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (80252667)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血小板 / インテグリン活性化 / 血栓 / inside-outシグナル |
研究実績の概要 |
本研究では、血小板活性化制御機構の詳細を明らかにしていくことを目的としているが、これにより冠動脈疾患、脳卒中などの動脈血栓症予防における抗血小板療法の治療成績向上と出血など合併症改善に貢献することが期待される。 血小板は骨髄巨核球の細胞質断片に由来するために核を有していない。このため他の細胞系において現在一般的に用いられる遺伝子導入などの実験手法が使用できないこと、また巨核球系細胞株を生理的アゴニストで刺激した場合でもにフィブリノゲン受容体インテグリンαIIbβ3活性化が誘導されない、といったことがこれまでの血小板研究における大きな障壁であった。よって血小板機能異常を有する症例の解析が血小板機能に関する研究の中心であった。 本研究のひとつでは、我々の樹立したアゴニスト刺激により誘導されるαIIbβ3活性化をフローサイトメトリーで観察可能とした「巨核球系細胞株CMKシステム」を用いることで発現クローニングによりαIIbβ3活性化、特にαIIbβ3が活性化状態を維持するために必須の分子を同定していく予定としている。 今年度の成果として、血小板より精製したRNAを用いてcDNAライブラリーを樹立し、これを一過性の遺伝子導入に使用可能な発現ベクターへ挿入し、エレクトロポレーションによりCMK細胞へ導入。既知の分子の遺伝子が含まれていることをPCR法で確認した。これを用いて現在αIIbβ3活性化状態の変化した細胞クローンをソーティングで採取するための実験を継続している。 また血小板機能異常症例に由来するインテグリンαIIb-R995W変異を有するノックインマウスの血小板機能解析では症例と同様の血小板機能異常があることを確認し学会発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血小板より精製したRNAを用いたcDNAライブラリーの樹立を行い、これらを巨核球系細胞株CMKに遺伝子導入することでインテグリンαIIbβ3活性化に変化を来した細胞クローンを採取することが開始できている。数は現時点では少ないがαIIbβ3活性化状態維持に重要と思われ今後検討を継続できる候補遺伝子が見つかっている。 ノックインマウスの検討でもin vitroでの血小板機能の解析結果では、インテグリンαIIb-R995W変異ノックインマウス血小板が症例とほぼ同様の機能異常を有することが確認でき学会で報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は引き続きCMK細胞へのcDNAライブラリー導入を継続し、αIIbβ3活性化状態に変化を来した細胞クローンをさらに得る予定である。これらの結果をふまえてαIIbβ3活性化状態維持に重要な候補分子を定め、CMK細胞に加えこれまでインテグリン研究で使用されてきたCHO細胞などで候補分子の過剰発現、RNAiによる候補分子のノックダウンを行いその機能を確認していく予定である。 適切な候補分子の同定が困難な場合には、現在遺伝子導入によりαIIbβ3の発現量を高めたCMK細胞、既知のインテグリン活性化に重要なtalin、kindlin-3の発現量を高めたCMK細胞を準備しており、これらの細胞へcDNAライブラリーを導入して新たな細胞クローンを得ることも考慮していく予定である。 インテグリンαIIb-R995W変異ノックインマウスでは平成27年度にはマウスを使用して生体内での血小板機能、血栓形成についての検討を進めて行く予定であるがαIIb-R995W変異をホモで有する血小板ではαIIbβ3の発現量が減少していることが明らかとなったため、ホモの個体で生体内における血小板機能評価が適切に行えるかどうか、ヘテロマウスでの評価を行うことも含め検討を継続していく予定である。 また、αIIbβ3活性化に重要とされているRap1bに変異を有するRap1b-N17ノックインマウスについては現在ホモの個体がほとんど生まれてこないため、Rap1B-N17マウスにおいてもヘテロの個体で検討可能か評価していく予定である。
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