研究課題
本研究は血栓形成に必須の分子である血小板フィブリノゲン受容体インテグリンαIIbβ3の活性化機序を明らかとすることを目的に行っている。定常状態における血小板αIIbβ3はフィブリノゲンに対して低親和性であるが血栓形成時にはinside-outシグナルによる速やかな活性化を受け血小板凝集を形成する。申請者らの樹立した巨核球系細胞株CMK細胞システムによる検討からαIIbβ3活性化状態の経時的変化に着目し、inside-outシグナルに重要な分子を同定、活性化制御機構を明らかとする試みを行うと同時に、血小板機能に異常を持つ症例解析も施行した。これらの試みの中で出血症状を呈する症例がinside-outシグナルで重要なRap1活性化を誘導するCalDAG-GEFI欠損が原因であることを見出した。さらに、これまで一般に行われてきたαIIbβ3活性化解析法ではなく、αIIbβ3活性化の経時的変化の観察を可能とするinitial velocity assayによる解析結果からCalDAG-GEFIがαIIbβ3を速やかに活性化させるために重要であるという新たな知見を見出した。この結果は新規抗血小板療法の開発にあたりαIIbβ3活性化のキネティクスが新たなターゲットと成り得ることを示唆しており、本年度は第38回日本血栓止血学会SPCシンポジウムでの講演発表、第78回日本血液学会教育講演において成果報告を行うとともに、アメリカ血液学会誌への論文発表を行っている。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Blood
巻: 128 ページ: 2729-2733
10.1182/blood-2016-03-704825