研究課題/領域番号 |
26461405
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
羽藤 高明 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (30172943)
|
研究分担者 |
山之内 純 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (10423451)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 血小板 / 血栓症 / 血栓止血学 / 血液内科学 |
研究実績の概要 |
先天性血小板減少症は様々な遺伝子異常によって引き起こされる症候群であるが、その約半数は原因遺伝子が不明である。我々は、常染色体優性遺伝形式をとっている先天性血小板減少症の一家系を見出したが、その家系では血小板減少患者に動静脈血栓症が多発していた。本家系での原因遺伝子は血小板減少と血栓性素因の両病態に関連していると考え、それを同定するために全エクソンをターゲットとしたエクソーム解析を行って、あるG蛋白共役型受容体遺伝子を同定した。本遺伝子の機能はまだ知られておらず、我々はエクソン内の点突然変異によってアミノ酸置換が生じ、このG蛋白共役型受容体の構造が変化して活性型になったため、血小板活性化がもたらされて、血小板減少と血栓症の発生につながっているのではないかと推測した。そこで、今年度はこの遺伝子異常を導入したトランスジェニックマウスを作成した。マウスは正常に発育し、遺伝子型と血小板数を調べたところ、遺伝子変異の発現は同定されたが、マウスの血小板数はやや少ない個体が存在するも平均すると野生型マウスとの差は明らかでなかった。トランスジェニックマウスの発現はランダムに生じるため、血小板での発現を保証するものではないことから、私どもはこの遺伝子変異を導入したノックインマウスを作成中である。さらに、この遺伝子の機能が不明な点も踏まえて、この遺伝子のノックアウトマウスも同時に作成中である。これらのマウスを用いた解析によって、私どもが同定したG蛋白共役型受容体の機能とその異常に基づく病態が明らかになるものと期待している。 マウスを用いた研究と並行して患者血小板の解析も進めており、アゴニスト惹起血小板凝集の亢進があることから、凝集受容体であるGPIIb-IIIa蛋白の機能や顆粒放出反応を検討した。しかし、これらの機能に異常はなく、凝集亢進の分子機序は未だ不明であり、さらに検討を重ねている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々がエクソーム解析で同定した遺伝子変異を持つトランスジェニックマウスの作成に成功した。その表現型は予想したものではなかったため、計画を修正して、ノックインマウス、ノックアウトマウスの作成に既に取りかかっている。今夏にはマウスが誕生し、その解析を行う予定にしている。したがって、「原因遺伝子を同定し、遺伝子組み換え蛋白の発現実験およびマウス個体でのin vivo解析を通じて本家系の病態を明らかにする」という本研究の目的に向けて概ね順調に研究を進めていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
ノックインおよびノックアウトマウスでの解析に重点を置いて解析を進める。マウスの表現型を確認し、さらにこのマウスを血栓誘発モデルに供して血栓傾向を呈しているかどうかを検討する。また、我々が同定したG蛋白共役型受容体の機能は未知であり、その機能を知るためにもマウスでの解析は有用と考えている。さらに、本G蛋白共役型受容体を純化して変異型受容体が活性型に変化しているかどうかの解析も進めていく予定である。これらの結果を踏まえて、血小板減少と血栓症発症の関連メカニズムに迫っていくことを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックマウスの表現型がみられなかったために、予定していた解析を中止して、ノックインマウスおよびノックアウトマウスを作成することに変更したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在進行中のノックインマウスおよびノックアウトマウスの作成と解析の費用に用いる。
|