研究課題
血管内皮細胞上に発現して血液凝固を制御するトロンボモジュリン(TM: thrombomodulin)に血管内皮細胞保護作用や血管新生作用があることを見出した。TMのどの領域にそのような活性が局在するのか、様々なTM変異体を作成し、それらを培養血管内皮細胞に投与して、細胞増殖アッセイなどを行い検討した。その結果、40アミノ酸から構成される5番目の上皮細胞増殖因子様領域(TME5)にその活性が集約されていることが明らかとなった。さらに、TME5が細胞保護作用を発揮する機序を明らかにするために、血管内皮細胞膜から抽出したたんぱく質とTME5を反応させた後、免疫沈降を行い、沈降物のたんぱく質解析を行うことでTME5と結合する細胞膜蛋白質の同定を試みた。その結果、ケモカイン受容体GPR15(G protein coupled receptor 15)がTME5と結合する膜たんぱく質として同定された。TME5はGPR15を介して、血管内皮細胞質内に生存シグナルを伝達し、抗アポトーシス蛋白Mcl-1の発現を増加させていることが明らかとなった。さらに、このTME5の内皮細胞保護活性を、内皮細胞障害に起因して発症する肝類洞閉塞症候群(SOS: sinusoidal obstruction syndrome)や血栓性微小血管症(TMA: thrombotic microangiopathy)のマウスモデルで検証したところ、コントロール溶媒を投与したマウスと比較して、TME5の投与を受けたマウスではSOSやTMAの発症が有意に抑制されることが明らかとなった。以上の結果から、TME5は血管内皮細胞障害に起因して発症する移植後合併症の予防薬として有用であると考えられた。
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