研究課題
マクロファージはサイトカインM-CSFやGM-CSFなどで異なった分化制御を受け、その制御バランスが炎症、感染、組織修復、腫瘍等、様々な病態と密接に関連する。申請者はM-CSFを中心に研究してきたが、その過程で、別のサイトカインIL-32もマクロファージを分化・生存させ、更には、M-CSFと協調して、より抗炎症性の表現型のマクロファージを誘導し、生存もより延長させる事を初めて見出した(J Immunol 2014)。本研究はそれらの分子基盤、及びIL-32の機能と役割をより明確にする事を目的に行った。本年度は特に、IL-32とM-CSFの基本的な生物活性の差異について更に詳細な解析を行った。興味深い事に、M-CSFでは単球の分裂を伴ったマクロファージ分化を誘導するが、IL-32では認められなかった。これは両サイトカインが異なる受容体を介して作用する事に由来すると考えられ、実際に、IL-32がPAR2という細胞表面蛋白質を介してマクロファージ分化を誘導する可能性を示唆する結果を得た。この為に、両サイトカインの共存在では抗炎症性の表現型のマクロファージが誘導されると考えられた。M-CSFと異なり、IL-32はげっ歯類に存在せず、霊長類及びヒトでのみ存在する事から、高度な自然免疫等を制御するのに重要な役割を果たす可能性が示唆される。本研究では実際に、IL-32が単独及びM-CSFと協調して、ユニークなマクロファージを誘導する事が示され、今後のより詳細な解析が重要となった。
2: おおむね順調に進展している
IL-32で誘導されるマクロファージの表現型について。計画通りに充分な解析を行った。更に踏み込んだ解析(特異的な受容体の同定)を現在、集中して進めている。
免疫学的及び生化学的な解析により、IL-32がユニークな表現型のマクロファージを誘導する事が明確になった。この成果をふまえ、今後はその分子基盤の解析を中心にする。特に、細胞表面受容体の同定及び全体的な遺伝子発現パターンの解析に注力する。計画の大幅な変更、研究を遂行する上での課題等はない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
J Immunol
巻: 196 ページ: 1823-1841
10.4049/jimmunol.1500845
巻: 195 ページ: 4341-4350
10.4049/jimmunol.1500955