研究課題/領域番号 |
26461409
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
色摩 弥生 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (40291562)
|
研究分担者 |
七島 勉 福島県立医科大学, 医学部, その他 (10192105)
野地 秀義 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20347214)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | c-Fos / 酸化ストレス / MDS / NF-kB / TNF-alpha / miR-34a / 好中球 / 遊走能 |
研究実績の概要 |
Fos強発現細胞及びノックダウン細胞を用いて、酸化ストレス(H2O2)時のTNF-alpha転写におけるc-Fosの役割を検討した。その結果、c-FosがNF-kappaB p65とTNF-alpha DNA promoter領域の結合を抑制することにより、TNF-alphaの転写を抑制することが判った。この結果は、第66回日本薬理学会北部会で発表した。 更に、(1) 骨髄異形成症候群(MDS)患者におけるc-Fos低下は、c-Fos mRNAを標的とする20種類のmiRNAのうちmiR-34aの増加に伴って生じていること、(2) c-Fosを標的とするmiR-155もMDSでは増加しているが、c-Fos低下への関与は有意ではないこと、(3) 患者から抽出したc-Fos低下細胞はc-Fos正常細胞に比べて、炎症性刺激によるTNF-alpha産生が亢進することも確認し、第57回米国血液学会年会で発表した(論文under revision)。また、c-Fos低下を引き起こすmiR-34a, miR-155の過剰発現が、別々の標的分子を介して好中球遊走能低下の一因となっていることを証明し、第57回米国血液学会年会で発表した(論文submitted)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
c-Fos発現減少の結果と原因解析は以下の理由で概ね順調と考える。 酸化ストレス時のc-Fos低下の影響を明らかにできたことは計画通り。放射線によるストレスについて適切な実験系を確立することができずにいる点では、遅れている。しかしながら、対象疾患においてc-Fosが低下する一因(miRNAの異常発現)を突き止め、その結果炎症性刺激によるTNF-alpha産生が亢進することを証明できたことと、異常発現しているmiRNAの細胞機能に与える影響とそのメカニズムの一部を解明できたことは、「無効造血」成立機序について新知見を与えた。この点は計画以上の成果と言える。
しかし、無効造血再現動物モデルを確立するには至ってない。これは、放射線によるストレス時の実験系が確立できなかったことに起因する。一方、骨髄異形成症候群血球でDOCK8、FGD4が減少し、それが血球機能不全に関与するという新たな手掛かりが得られた。これは無効造血成立機序を解明する想定外の手掛りであり、研究計画の変更が必要と考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
患者骨髄から好中球前駆細胞を各分化段階毎に分取し、分化過程のどの段階でc-Fos、DOCK8、FGD4の減少とその原因であるmiR-34a増加が起こるのかを明らかにする。更にmiR-34aはp53によって転写される分子であると同時に、エピジェネティクスの制御も受ける。「細胞ストレス→エピジェネティクスの変化またはp53の誘導→miR-34a増加」の間の分子経路の解明を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
モデル動物作成を実施しなかったため、次年度使用額が生じた。 しかし、一方c-Fos減少の原因となるmiR-34a過剰発現が好中球機能に及ぼす影響とそのメカニズムの解明は、当初の予定を超えて進展した。この部分にかかった費用により、モデル動物作成しなかった残額の大部分を消費した。
|
次年度使用額の使用計画 |
動物モデルの作成は、c-Fos減少またはその原因(miR-34a過剰発現)の造血に対する影響を知るための計画であった。しかし、miR-34aのみならずDOCK8やFGD4等miR-34aの標的遺伝子であり、血球機能を制御する蛋白の減少という血球機能異常の新たな手掛りを得た。そのため、まず、miR-34a、c-Fos、DOCK8、FGD4が造血のどの段階で減少しているのか、分化に影響を与えているのか否か、解析する。残額はこの解析(患者骨髄からの分画採取に必要な抗体、DNAメチル化解析キット、変異解析のためのシークエンシング試薬)に用いる。
|