研究実績の概要 |
【目的】c-Fos蛋白が減少している骨髄異形成症候群患者の好中球において、細胞ストレス時のNF-kB過活性とその機序を明らかにし、無効造血に対する分子標的療法確立を目指した。【方法】c-Fosを強発現またはノックダウンしたHL60細胞を用いて、炎症(LPS)または酸化ストレス(H2O2)時のTNF-alpha産生に対するc-Fosの役割を検討した。骨髄異形成症候群患者の好中球を用いて、c-Fos蛋白減少とc-Fosを標的とするmiR-34a、miR-155の発現レベルの関係、これらのmicroRNA発現異常の好中球機能に与える影響を解析した。【成果】c-Fosの減少がLPS刺激や酸化ストレス時のTNF-alpha過剰産生の一因となっていることを明らかにした。これは、NF-kBとTNF-alpha DNAプロモーターの結合を抑えるc-Fosの作用減弱による。c-Fos減少の原因としては、miR-34aとmiR-155の過剰発現が確認された(Shikama et. al., PLOS ONE 2016)。また、miR-34aはCdc42特異的Guanine nucleotide exchange factor (GEF)であるDOCK8、miR-155はRac1とCdc42特異的GEFのFGD4の発現を減少させることにより、患者好中球の遊走を抑制していることを明らかにし報告した(J. Immunol., Cao et. al., 2017 Mar 1;198(5):1887-1899)。以上の結果は、microRNAの発現異常が好中球の様々な機能異常に関与すること、Rac1・Cdc42の活性亢進が好中球機能異常を改善する可能性を示唆する。
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