研究課題
造血細胞におけるSATB1発現の意義を解析するため、SATB1/Tomato knock-in マウスを作成した。このマウスは、SATB1の片アレルに赤色蛍光を発するTomato遺伝子を置換している。造血幹細胞分画(Lin- Sca1+ c-KitHi (LSK) CD150+ Flt3-)に、SATB1/Tomato+細胞が存在することがわかった。また、メチルセルロースコロニーアッセイによりSATB1/Tomato+造血幹細胞とSATB1/Tomato-造血幹細胞の両方が、多数のCFU-Mixおよび骨髄/単球系コロニーを生み出すが、SATB1/Tomato+造血幹細胞は、BFU-E(赤芽球系コロニー)の産生能力がSATB1/Tomato-造血幹細胞よりも低かった。移植実験では、SATB1/Tomato+造血幹細胞とSATB1/Tomato-造血幹細胞の両方がLSK CD150+ Flt3-の造血幹細胞分画を再構築したが、SATB1/Tomato+造血幹細胞の方がより強くBリンパ球系への分化傾向を示した。さらに、これまでの研究において、ESAM(endothelial cell-selective adhesion molecule)がマウス造血幹細胞の機能的マーカーとして利用できることが分かっていることから、ヒト造血細胞におけるESAM発現について解析した。ヒト骨髄細胞、末梢血へ動員した骨髄細胞、臍帯血から、ESAM発現をもとに、ヒト造血幹細胞を単離できることがわかった。ESAM高発現CD34(+)CD38(-) 細胞は、多血球系統への分化能と、免疫不全マウスにおける長期骨髄再構築能を有していた。また、臍帯血細胞とコラゲナーゼ処理をした造血細胞におけるCD34(+)CD38(-)分画で認められる、極端にESAMの発現が強い細胞は、血管内皮系細胞であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
SATB1/Tomato ノックインマウスの解析が進んでいる。しかし、加齢とSATB1-MS4A3の関係性の解析がまだ進んでいない。
正常造血幹細胞分化におけるSATB1-MS4A3系の意義をさらに検討していく。
研究計画の進捗が一部遅れているところがあり、物品購入が先送りとなった。
研究の進行に合わせて、研究費を使用していく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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