研究課題
アンジオクライン分子とは、2010年にコーネル大学のRafiiらによって提唱された血管内皮由来の生理活性物質の総称である。研究代表者らは、本研究の遂行過程で、アンジオクライン分子に属する一部のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が、転写因子Hes-1との相互作用を有し、やはりアンジオクライン分子の一つである造血因子Kit-ligandの細胞外ドメイン分泌(プロセシング)を促進し、慢性骨髄性白血病の白血病細胞の増殖、そして白血病病態を制御していることを明らかにした。また、代表者らは、同じくアンジオクライン分子に属する一部のセリンプロテアーゼ、血液線維素溶解系(線溶系)因子が、MMPの相互活性化システムを通じて、間葉系幹細胞、骨髄ストローマ細胞と造血幹細胞を含む造血系細胞、白血病細胞との相互作用を制御し、造血制御、そして白血病・リンパ腫の病態形成に関与していることを示唆した。代表者らは、白血病・リンパ腫に対する主要な治療法の一つである造血幹細胞移植において重要な副作用となっている、移植片対宿主病(GVHD)の病態において、MMP、そして線溶系因子群が、TNF-αやFas-ligandに代表される炎症性サイトカインのプロセシングを通じて、その病態、そして重症度を制御していること、さらにこれらのプロテアーゼを通じた移植片対白血病効果の存在、また関連病態である血球貪食症候群の誘導、病勢制御機構を次々と提示し、白血病・リンパ腫病態におけるアンジオクライン分子群の動態と機能、さらに各種プロテアーゼ活性との相互作用を明らかにした。加えて、代表者らは、線溶阻害剤やプラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1)阻害剤による線溶系調節による白血病・リンパ腫、そして免疫・炎症性疾患に対する分子療法開発の基盤形成に至ったことから、本研究計画当初の目的、目標にかなった業績を残したと考えている。
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Blood
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