研究課題
成人T細胞白血病(ATL)はT細胞の白血病であり、この発症はヒトT細胞白血病ウイルス1型 (HTLV-1)の感染に起因する。ATLは極めて予後不良の白血病であるため、予後の改善に貢献できる治療薬の開発は急務である。近年、亜ヒ酸(Arsenic trioxide)を用いた臨床治験が開始され、ATLに対して良好な治療成績を示している。そこで、亜ヒ酸感受性に関わる細胞因子を探索し、脱ユビキチン化酵素Ubiquitin-specific protease 10 (USP10)を同定した。Usp10ノックアウト細胞に亜ヒ酸を処理したところ、野生型細胞よりも強く活性酸素に依存したアポトーシスを誘導した。その際Usp10ノックアウト細胞では、亜ヒ酸によって細胞質内に形成されるストレス顆粒形成能が野生型細胞よりも低下していた。一方で、USP10を過剰発現させると、ストレス顆粒の形成は抑制されることが新たに示された。USP10の変異体を用いて解析したところ、脱ユビキチン化活性を欠くUSP10変異体(C424A)も野生型と同程度にストレス顆粒の形成を抑制し、この抑制が脱ユビキチン化活性に依存的しない作用であることが示された。また、ストレス顆粒構成因子であるG3BP1との結合に必要なUSP10のN末端断片のみを過剰発現させても、ストレス顆粒の形成を抑制した。一方でG3BP1と結合しないC末端断片の過剰発現はストレス顆粒の形成を抑制しなかった。以上から、USP10はストレス顆粒に対して正負の作用をもつことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
USP10変異体を用いた解析を終了し、ストレス顆粒形成制御に関わるUSP10の機能領域を同定した。現在はUSP10結合因子を用いた解析を開始している。
USP10による亜ヒ酸感受性抑制の分子機序およびその意義を明らかにするため、これまでに我々が同定しているUSP10結合因子の解析を行っていく。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
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