研究課題
成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型 (HTLV-1)の感染に起因する極めて予後不良の白血病であり、治療薬の開発が急務である。亜ヒ酸(Arsenic trioxide)およびプロテアゾーム阻害剤ボルテゾミブ(Bortezomib)はATL細胞にアポトーシスを誘導することから、ATLに対する抗癌効果が期待できる。本研究では、これらの薬剤がどのようにしてHTLV-1感染細胞に細胞死を誘導するのかについて解析し、その分子機序の解明を試みた。我々は亜ヒ酸またはボルテゾミブがHTLV-1感染細胞SLB-1に対して強いアポトーシスを誘導すること、このアポトーシス感受性はATLに由来しないT細胞白血病由来Jurkat細胞よりも有意に高いことを見出した。さらに亜ヒ酸またはボルテゾミブによるアポトーシス感受性に関与する因子として脱ユビキチン化酵素 Ubiquitin-specific protease 10 (USP10)を同定した。すなわち、RNA干渉によりJurkat細胞においてUSP10の発現を低下させると、亜ヒ酸またはボルテゾミブによって誘導されるアポトーシスが増強した。この分子機序をさらに明らかにするため、亜ヒ酸またはボルテゾミブ処理した細胞においてUSP10がどのような細胞防御機構に関与しているのか、そのような機構が薬剤感受性に関与するのかについて現在解析を続けている。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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