研究課題/領域番号 |
26461420
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
一井 倫子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (30633010)
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研究分担者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20177489)
加藤 恒 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20705214)
横田 貴史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60403200)
織谷 健司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324762)
田所 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80403062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多発性骨髄腫におけるインテグリンα8の発現パターンと機能を解析する事である。目的を達成するために、①骨髄腫患者腫瘍細胞、骨髄腫幹/前駆細胞、正常骨髄でのインテグリンα8の発現解析、②インテグリンα8およびインテグリン活性化に必須であるtalin-1の遺伝子を改変した骨髄腫細胞を用いた増殖能、浸潤能、骨髄生着能、アポトーシス、抗骨髄腫薬反応性 の解析、 ③インテグリンα8の骨髄内リガンドの同定 を行う予定としている。 平成26年度には、主に①と②に関する実験を進めた。具体的には、患者検体を用いた骨髄腫細胞におけるインテグリンα8発現についての検討を、症例を増やして解析を行った。現時点で、患者30症例に本研究へ協力して頂く事となっている。興味深いことに、骨髄内でのインテグリンα8の発現が、正常骨髄では形質細胞に限局しているのに対して、骨髄腫患者骨髄では、B前駆細胞の一部にも発現を認める症例が存在する事が分かった。この結果は、インテグリンα8の発現が骨髄腫の発症や進展に関わっている可能性を示唆している。 また平成26年度には、骨髄腫細胞株KMS12-BM、RPMI8226にインテグリンα8を過剰発現した細胞株を樹立した。樹立した細胞株は継代可能なstable株であるため、これらの細胞を用いて、今後さらに機能解析を進める事が可能である。免疫不全NOGマウスへの移植実験の準備と並行して、vitro実験による機能解析を行った。まず、増殖能をMTTアッセイにて検討した。結果として、インテグリンα8発現によりKMS12-BM細胞株では増殖抑制、RPMI8226細胞株では増殖促進という相反する結果が得られた。この結果は、インテグリンα8の骨髄内リガンドが不明であるため適切な実験条件で培養できていない可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、正常または骨髄腫患者骨髄内でのインテグリンα8発現に関する詳細な解析、および形質細胞分化と多発性骨髄腫進展における機能的な役割についての基礎的な研究を行っている。申請時の計画では、平成26年度に、多発性骨髄腫患者・ヒト正常骨髄、マウス骨髄でのインテグリンα8の発現パターンを明らかにし、マウスへの移植実験を用いて、骨髄腫細胞のvivoでの生着能について検討を行う予定としていた。 平成26年度に行った実験内容について以下に述べる。まず、骨髄腫患者での解析については、既に30症例の登録が得られ、解析を行った。今後治療経過と合わせて解析を行う予定である。ヒト骨髄腫細胞やその前駆細胞を免疫不全マウスへ移植する実験に関しては、現在準備段階であり、平成27年の開始となる予定となったが、申請時に平成27年度より開始する計画であったインテグリンα8過剰発現細胞株の作成を先立って行い、遺伝子改変細胞株の樹立に成功した。また、野生型マウス骨髄におけるインテグリンα8発現に関しても計画通り解析を行い、ヒトとは異なり、形質細胞で発現していないことが分かった。 以上より、平成26年度は計画したほとんどの実験を行う事が出来たといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、本研究の進捗状況に問題はない。平成26年度に行った実験結果から、野生型マウス骨髄内の形質細胞はインテグリンα8を発現していないことが明らかになったが、ヒト正常骨髄や多発性骨髄腫患者を用いた検討では、発現が確認できている。今後は、免疫不全マウスを用いたヒト化骨髄腫マウスモデルおよび遺伝子改変細胞株を用いた実験を重点的に行うことにより、形質細胞分化と多発性骨髄腫進展におけるインテグリンα8の役割について明らかにすることができると考える。
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