研究課題
本研究の目的は、多発性骨髄腫におけるインテグリンα8の発現と機能を解析する事である。目的を達成するために、①骨髄腫患者腫瘍細胞、骨髄腫幹/前駆細胞、正常骨髄でのインテグリンα8の発現解析、②インテグリンα8およびインテグリン活性化に必須であるtalin-1の遺伝子を改変した骨髄腫細胞を用いた増殖能、浸潤能、骨髄生着能、アポトーシス、抗骨髄腫薬反応性 の解析、 ③インテグリンα8の骨髄内リガンドの同定 を行う予定とした。昨年度までに行った②を中心とした機能解析では、インテグリンα8による増殖能や骨髄生着能への作用は明らかでなかった。平成28年度には、主に①に関する実験を進めた。具体的には、患者検体から単離した腫瘍細胞を用いて腫瘍特異的プライマー(ASO-PCRプライマー)を患者毎に作成し、インテグリンα8のRNA発現との比較、および、末梢血中に存在する骨髄腫細胞の解析を中心に行う事とした。末梢血・骨髄中のB前駆細胞、成熟B細胞、形質細胞、腫瘍細胞分画を分化段階毎に細分化して単離しRNA発現を解析したところ、インテグリンα8発現は、患者腫瘍特異的プライマーによる腫瘍細胞分画の発現にほぼ合致した。ただし、骨髄中のsIgM陽性CD20陽性B細胞分画では、ASO-PCRプライマーでのPCRで発現が確認されたのに対して、インテグリンα8の発現は認められなかった。これらの結果より、インテグリンα8の発現が骨髄腫細胞と完全に一致するのではないことが分かった。一方、末梢血においては腫瘍細胞量を反映する結果が得られた。ASO-PCR法は患者ごとにプライマーを設計する必要がある。インテグリンα8による末梢血のMRD測定が有用である可能性が考えられた。
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