研究課題
2007年にサーカディアンリズム障害を伴う交替制勤務がWHOから発がんのリスク因子に挙げられた。シフトワーカーに大腸癌、前立腺癌や乳癌の発症率が優位に高いことや、癌細胞では時計遺伝子発現の異常などのエビデンスが報告された。ヒトの様々な疾患とサーカディアンリズムとの関連が注目されているが、致死的疾患である癌、特に白血病との関連についての解析は少数の報告しかない。サーカディアンリズムに重要な役割を果たしている時計遺伝子の発現について我々は当科に入院した急性白血病患者の初診時芽球細胞を用いて時計遺伝子群のmRNA発現レベルをreal time PCR法にて解析した。この研究により時計遺伝子であるPer1、Per2、Per3、Bmal1遺伝子は健常人骨髄に比べ発現低下し、一方でCry1,2、Clock遺伝子は発現増加していることが示された。さらに臨床的にはCry1/Per2比が予後予測因子と相関していることが明らかとなった。これらの時計遺伝子の変化が白血病発症に与える影響について解析を行った。さらに正常造血幹細胞の末梢血幹細胞動員は骨髄内に存在する骨髄微小環境(ニッチ)から造血幹細胞が末梢血中へ移行する現象であるが、この動員機構にも時計遺伝子が関与していることが報告されている。骨髄微小環境を介した正常造血幹細胞と白血病幹細胞の関係を考慮すると腫瘍細胞自体の問題だけでなく、その周囲の骨髄微小環境におけるサーカディアンリズムの変化が病態の変化に関与している可能性もある。
2: おおむね順調に進展している
G-CSF投与による末梢血幹細胞動員時の白血球時計遺伝子の変化についてはG-CSF投与前後で有意な時計遺伝子群の変動が認められ、副腎ー交感神経系の変化が時計遺伝子発現に影響を与えている可能性を示唆するデータを英文専門誌に発表した。(Sugiyama A, Yujiri T, et al. Chronobiol Int 32: 934-41, 2015)
つい最近の論文によれば時計遺伝子Bmal1やClockが急性骨髄性白血病の発症に関与していること、特に白血病幹細胞の分化と時計遺伝子の関係について遺伝子変異動物を用いた解析が報告された。(Puram et al. 2016, Cell 165,303-316)この論文には我々も当初から計画していたMLL-AF9白血病マウスモデルを扱っていることから、研究の新規性も考慮しPML-RARaをモデルとした研究に変更する方針である。
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