研究課題
骨髄腫骨微小環境の構成細胞である破骨細胞と骨髄間質細胞のいずれの共存によっても骨髄腫細胞で発現が亢進する因子として、Pim-2キナーゼを同定し、Pim阻害薬が骨髄腫細胞に細胞死を誘導すること、また骨髄腫細胞との共存により骨髄間質細胞にも Pim-2が発現誘導され、Pim-2の発現亢進が骨芽細胞分化を抑制することを見出した。さらに、Pim-2が発現誘導の上流シグナルの解析により、TAK-1の関与を見出した。骨髄間質細胞との共存あるいはTNF-αの添加により、骨髄腫細胞にPim-2の発現と同時にTAK-1の発現とそのリン酸化が誘導された。TAK-1阻害薬(5Z)-7-oxozeaenolは、Pim-2の発現を抑制し、 Pim-2阻害と同様に用量依存的に骨髄腫細胞株の増殖と生存を抑制した。多発性骨髄腫骨病変部では高度な酸性環境が形成されているが、酸性培地で骨髄腫細胞株を培養すると、Aktのリン酸化とともにPim-2キナーゼの発現が誘導された。酸性環境下では骨髄腫細胞のTDAG8、OGR1、TRPV1などのpHセンサーの発現が亢進した。PI3K阻害薬LY294002の添加により、酸性環境下でのAktのリン酸化の誘導が消失するとともに、これらのpHセンサーの発現亢進も減弱した。酸性下では骨髄腫細胞で転写因子Sp1の核移行が誘導されたが、この核移行はLY294002の添加により抑制された。また、LY294002およびSp1阻害薬terameprocolにより特に低pH領域(pH4~7)を感知するTRPV1の酸性下での骨髄腫細胞における発現亢進が抑制された。これらの結果より、骨髄腫細胞は酸を感受しPI3K-AktおよびPim-2を介する生存シグナル経路を活性化し、この活性化がさらに自らのpHセンサーの発現を増強させるという悪循環を形成していることが示された。
1: 当初の計画以上に進展している
各種阻害薬が入手でき、検討が順調に進んだ。
Pim-2キナーゼ、TAK-1がどのようなシグナル経路を介して骨髄腫の骨形成抑制と骨微小環境内での腫瘍進展・薬剤抵抗性をもたらしているのかを探索する。また、Pim阻害薬、TAK-1阻害薬の治療効果、およびその効果は発現機序明らかにする。
培養実験等が順調であったため、保有していた試薬で賄える部分があり阻害薬などの購入が予定より少なくなった。
動物モデルでの実験を予定しているため、阻害薬が多量に必要である。そのために使用予定である。
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