研究課題
骨髄腫(MM)骨病変部では酸性環境が形成されているが、酸性下では骨髄腫(MM)細胞のpHセンサーTRPV1の発現が亢進し、酸感受性が高まっていた。酸はMM細胞のPI3K-Akt生存経路の活性化を介し、転写因子Sp1の核移行を誘導しその標的遺伝子のHDAC1やTRPV1の発現亢進をもたらした。MM細胞が酸感受を亢進させつつ生存シグナルの活性化を獲得するという骨病変部酸環境へのMM細胞の順応機序が示された。また同時にHDAC1の発現誘導を介するエピジェネテックな機序により、酸性環境はMM細胞にDR4などの遺伝子発現の抑制をもたらすことが示された。MM細胞と骨髄微小環境との相互作用により両者にPim-2キナーゼが発現誘導され、腫瘍進展と骨病変の形成に重要なシグナルを媒介していたが、Pim-2の発現誘導に関わる上流因子としてセリンスレオニンキナーゼであるTGF-β-activated kinase 1 (TAK-1)を見出した。TAK-1阻害によりPim-2作用が抑制され、腫瘍抑制とともに破骨細胞形成亢進の抑制と骨芽細胞分化の抑制を回復させた。TAK-1阻害薬LLZ1640-2を購入し、MM動物モデルでの検討を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
骨髄腫細胞における細胞外pH受容器であるGタンパク共役受容体のTDAG8, OGR1, G2A,およびバニロイド受容体のTRPV1の発現量とその下流シグナルの変化を調べ比較検討した結果、TRPV1が細胞外pH受容器として主要な役割を果たしていることが明らかになった。この結果を受けて、TRPV1に焦点を絞ることができ、またTRPV1のagonistとantagonistが市販されており入手出来たため、TRPV1に着目して検討を順調に進めることが出来た。さらに、TAK-1阻害薬も入手した市販されているもので活性を十分に押さえることが可能であり、この試薬を用いることで検討を進めることが出来た。そして、TAK-1阻害により骨髄腫細胞でのPim-2発現がほぼ抑制されるという結果であったため、TAK-1-Pim-2経路という新たな腫瘍進展のシグナル伝達機序に着目できた。このように、実験に必要な試薬が入手出来、予想した結果が順調に出たので計画以上に進行した。
骨髄腫細胞と骨髄微小環境側の細胞におけるTAK-1-Pim2経路活性化の分子機序と、腫瘍進展と骨病変の形成に重要なシグナルへの関与を明らかにし、TAK-1阻害の治療効果を動物モデルで実証する。
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International Journal of Myeloma
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