研究課題
骨髄腫(MM)骨病変部では酸環境が形成されているが、酸はMM細胞のPI3K-Akt生存経路の活性化すると共に、転写因子Sp1の核移行を誘導しpHセンサーTRPV1の発現を亢進させ、MM細胞が酸感受性を高めつつ生存シグナルの活性化を獲得するという酸環境への順応機序が示された。また、酸性環境はHDAC1の発現誘導を介するエピジェネテックな機序により、MM細胞にDR4などの遺伝子発現の抑制をもたらすことが示された。MM細胞と骨髄微小環境との相互作用により両者にPim-2キナーゼが発現誘導され、腫瘍進展と骨病変の形成に重要なシグナルを媒介していたが、Pim-2の発現誘導に関わる上流因子としてセリンスレオニンキナーゼであるTGF-β-activated kinase 1 (TAK-1)を見出した。MM細胞においてTAK-1の発現およびそのリン酸化が構成的に亢進していたが、骨髄間質細胞との共存によりMM細胞においてTAK-1のリン酸化がさらに亢進した。TAK-1阻害は、NF-κB、p38MAPK、ERKおよびSTAT3の活性化を抑制し、MM細胞の生存・増殖に深くかかわっているPim-2の抑制だけでなく、転写因子Sp-1の発現も抑制し、MM細胞に細胞死を誘導した。また、MMにおける破骨細胞分化促進因子であるRANKLは破骨細胞前駆細胞にTAK-1のリン酸化を誘導したが、TAK-1阻害は破骨細胞形成の亢進を抑制した。さらに、TAK-1阻害は骨髄間質細胞においてTNF-αおよびTGF-βシグナルを抑制する一方、BMP-2シグナルを活性化し、MM細胞の存在下で抑制された骨芽細胞分化を回復した。以上の結果より、TAK-1はMMの腫瘍進展と骨破壊病変形成を促進する枢軸的な制御因子であり、TAK-1阻害薬は腫瘍抑制とともに骨病変の進行抑制と骨再生をもたらす新規治療薬の候補と考えられる。
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