研究課題/領域番号 |
26461423
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
|
研究分担者 |
村上 雅尚 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80571017)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 癌 / 造血器腫瘍 / ウイルス / 感染症 / 微生物 |
研究実績の概要 |
多くの造血器腫瘍の発症に微生物感染・炎症が関与していることが判明しつつある。しかし、感染と腫瘍化メカニズム、あるいはそれに基づいた治療戦略や予防については未解決な点が多い。本年度に発表したEpstein-Barr(EB)ウイルス感染造血器腫瘍の研究成果について、その概要を記す。 1.慢性活動性EBウイルス感染症:慢性活動性EBウイルス感染症の病態はEBウイルス関連血球貪食症候群やEBウイルス関連NKリンパ腫と類似することが知られている。本疾患の特徴である急性感染病態から悪性腫瘍に至るメカニズムはいまだ詳細が明らかにされていない。我々は感染症と悪性腫瘍の両側面を持つ本疾患において、コントロール群と比べて慢性活動性EBウイルス感染症特異的に発現変化する遺伝子群の同定を行った。RT-PCR法やELISA法での解析の結果、とりわけIL-10とTNF-αの発現亢進が認められた。これらのサイトカインが関連したEBウイルス感染細胞の増殖を促すようなシグナル伝達系が本疾患の病態形成に重要であることが示唆された。 2.EBウイルス関連膿胸関連リンパ腫:膿胸関連リンパ腫は肺結核に関連する慢性炎症を基盤に発生するリンパ腫で、その発症例は本邦からの報告が大多数を占める。全例にEBウイルス感染が関与することから、「EBウイルス感染-慢性炎症-腫瘍化」の優れた研究材料となると考えられる。PCRアレイシステムを用いて膿胸関連リンパ腫特異的に発現変化する候補遺伝子群を拾い上げることができた。今後はそれら遺伝子群の発現レベルについて別手法を用いて確認する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EBウイルス関連造血器腫瘍として慢性活動性EBウイルス感染症をとりあげ、本疾患の病態を説明しうるサイトカインが誘導されている事を示すことができた。 また、EBウイルス膿胸関連リンパ腫において、発現変化する候補遺伝子群を絞りこむことができた。 以上を総合し、研究が計画通りに進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 慢性炎症とEBV関連造血器腫瘍 本年度得られた結果に基づき、膿胸関連リンパ腫特異的発現と考えられる遺伝子群について、定量的リアルタイムPCR法を用いて、その発現レベルを確認する。 (2) メルケル細胞ポリオーマウイルスと造血器腫瘍の関係について リンパ系腫瘍も含めた様々な腫瘍において、ゲノムの検出により、メルケル細胞ポリオーマウイルスの蔓延性を網羅的に調べる。検出されたウイルスの全ゲノム解析を行い、その遺伝子に腫瘍特徴的な変異がみられるのかを解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は試薬を中心に物品費の支出を最低必要限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費、成果発表のための国内旅費、および学術誌掲のための費用を予算に計上した。
|