研究課題
平成26年度は原爆被爆者に発症した骨髄異形成症候群症例の収集、検体試料収集、それらのゲノム解析の開始が当初の目的であった。これまでに長崎の被爆者骨髄異形成症候群3例に対して、本研究に関する説明を行い、インフォームドコンセントを得た後に、骨髄細胞検体およびコントロールとして用いる皮膚生検検体を収集した。皮膚検体からは培養を経て線維芽細胞を得、それを胚細胞型ゲノムコントロールとして用いた。3症例はいずれも長崎における原爆被爆者で、被爆距離3km未満の近距離被爆者である。3例とも化学療法や放射線療法の既往はない。対象例より病歴、身体所見、臨床検査所見、診断、病型、予後因子、染色体核型を含む骨髄所見などの臨床情報を収集した。また、この3例に対してイルミナ社の次世代シーケンサーであるHiSeqを用いて全エクソーム解析、全ゲノム解析を実施した。エクソーム解析に当たってはエクソン部分のゲノムを濃縮して解析した。胚細胞型コントロールについても、全ゲノム、エクソーム共に検体と同じ方法で塩基配列を決定し、その塩基配列と比較する事で骨髄異形成症候群細胞における変異遺伝子候補を抽出した。次世代シーケンサにて同定された変異候補遺伝子については、他方法を用いたシーケンス確認作業が必要であり、そのためのシーケンス用プライマー設計及び作製を実施した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画で予定していた平成26年度計画は、(1)長崎県における被爆者MDS臨床所例の集積及び臨床情報の収集、(2)試料収集、(3)MDS細胞ゲノムDNAを用いたexome解析、(4)MDS細胞ゲノムDNAを用いた全ゲノム塩基配列決定であった。上述の様に、3例の原爆被爆者MDS症例を集積し、それらから得られた検体についてエクソーム解析、全ゲノム解析を実施することが出来た。以上より、平成26年度の進捗は概ね順調と判断した。
次年度は、症例集積を更に推進して、原爆被爆者MDSの臨床的特徴について解析できるようにすること、並びに現在進行しているエクソーム解析、全ゲノム解析について確認作業を遂行することが、大きな方策である。原爆被爆者が高齢化する中で、対象となり得る例も減少が懸念される。そのために、過去に診断された症例のデータや試料をどのように用いることが出来るかについても検討する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
LEUKEMIA
巻: 28 ページ: 1459-1466
10.1038/leu.2014.15
Curr Hematol Malig Rep
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