研究課題
我々はこれまでPU.1が多発性骨髄腫及びホジキンリンパ腫(HL)の腫瘍抑制因子であることを示してきた。tet-offの系を用いてPU.1をconditionalに骨髄腫細胞株U266, KMS12PE、HL細胞株L-428, KM-H2に発現させると細胞増殖停止と細胞死が起こることを示した。そしてPU.1による細胞増殖停止にはU266及びL-428ではp21が関わっていること、細胞死にはU266, KMS12PEでTRAILが一部関わっていることを示した。我々は更に骨髄腫細胞の生存に必須のIRF4の発現がU266において低下していることを示した。IRF4をknockdownすると殆どの骨髄腫細胞株は細胞死を起こすことがこれまで示されている。今回、我々はKMS12PEにおいてもIRF4がPU.1によって低下することを示した。さらにKHM11骨髄腫細胞株にもlentivirusの系を用いてPU.1を導入した。すると細胞増殖停止と細胞死がおこること、さらにIRF4が発現低下することを示した。このPU.1によるIRF4発現低下のメカニズムについては現在解明中である。このIRF4の発現低下は腫瘍細胞に細胞死を誘導するIFNbの直接の転写因子でその発現を上昇させることが知られているIRF7の発現を上昇させることを突き止めた。このメカニズムをしてはIRF4がIRF7のpromoterに結合してその発現を抑制していることがABC type DLBCL細胞にて報告されているが、同様のことが骨髄腫細胞株で起こっていることを我々は示した。これらのメカニズムからPU.1による細胞増殖停止と細胞死にはIRF4の発現低下が関わっていることが示された。我々はこれまで骨髄腫及びリンパ腫細胞に細胞死を引き起こす化合物をスクリーニング中である。これまで1500の化合物を検索した。この中に様々なレベルで骨髄腫及びリンパ腫細胞に細胞死を起こす化合物を見出している。今後はこれら化合物の中にPU.1やTRAILの発現を上昇させる薬剤がないかを検索する予定としている。
2: おおむね順調に進展している
PU.1発現による骨髄腫細胞の細胞増殖停止と細胞死のメカニズムをIRF4の発現低下に関連してかなり解明できている。更に新規薬剤のスクリーニングを行っており、有力な化合物である可能性のあるものをいくつが見出している事による。
PU.1によるIRF4の発現低下のメカニズムの解明を行っていく。更にこれを応用した治療法の開発を行っていく。現在の新規薬剤のスクリーニングを進めて行く。特に抗骨髄腫細胞作用のある薬剤についてPU.1の発現を上昇させるもの、IRF4の発現を低下させるもの、IRF7の発現を上昇させるものなど、骨髄腫の細胞増殖停止や細胞死を引き起こす薬剤のスクリーニングを進めて行く。
2984円と残金は少額であり、無理して物品を購入するよりも翌年度に有効利用したいと考えた。
少額であるので次年度の予算と合わせて研究に必要な消耗品の購入に充てる予定です。
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