研究課題
我々はこれまでPU.1が多発性骨髄腫の腫瘍抑制因子であることを示してきた。実際にはtet-offの系を用いてPU.1をconditionalに骨髄腫細胞株U266, KMS12PEに発現させると細胞増殖停止と細胞死が起こることを示した。これまで細胞増殖停止にはU266ではp21が関わっていること、細胞死にはU266, KMS12PEいずれにおいてもTRAILが一部関わっていることを示した。IRF4をknockdownすると殆どの骨髄腫細胞株は細胞死を起こすことがこれまで示されているが、今回我々はU266とKMS12PEにおいてIRF4がPU.1によって低下することも示した。さらにKHM11骨髄腫細胞株でもlentivirusの系を用いてPU.1を導入すると細胞増殖停止と細胞死がおこること、さらにIRF4が発現低下することを示した。このPU.1によるIRF4発現低下のメカニズムについてはPU.1が直接IRF4のプロモーターに結合していることをクロマチン沈降法で確認した。レポーターassayを行い、このPU.1の結合がIRF4のプロモーター活性を抑えること、それがIRF4プロモータのPU.1 biding site に依存していることがわかった。更にこのIRF4の発現低下は腫瘍細胞に細胞死を誘導するIFNbの直接の転写因子でその発現を上昇させることが知られているIRF7の発現を上昇させることを突き止めた。このメカニズムをしてはIRF4がIRF7のpromoterに結合してその発現を抑制していることがABC type DLBCL細胞にて報告されているが、同様のことが骨髄腫細胞株で起こっていることを我々は示した。これらのメカニズムからPU.1による細胞増殖停止と細胞死にはIRF4の発現低下が関わっていることが示された。我々はこれまで骨髄腫細胞に細胞死を引き起こす化合物をスクリーニング中である。これまで1500の化合物を検索した。この中に様々なレベルで骨髄腫に細胞死を起こす化合物を見出している。今後はこれら化合物の中にPU.1やTRAILの発現を上昇させる薬剤がないかを検索している。
2: おおむね順調に進展している
PU.1による細胞増殖停止と細胞死のメカニズムを解明しつつある。また、新規の分子標的療法薬の候補をいくつか見出しており、更に有効な薬剤の開発につながる可能性がある。
現在、創薬等支援技術基盤プラットフォームに申請して、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所遺伝情報分析研究室の池尾一穂先生の教室にてU266, KMS12PEにおいてPU.1発現させた場合のPU.1のChIP-seqを施行して頂いた。これまでの解析結果とこのChIP-seqのデータで他にPU.1によって引き起こされる細胞増殖停止と細胞死のメカニズムとして他にないかを解析していく。また、化合物スクリーニングで得た骨髄腫細胞に細胞死を引き起こす化合物の活性や毒性を調べて有力な分子標的療法薬となる薬剤の候補をみつけていく予定である。
平成27年度使用予定の消耗品が少々余ったため、次年度に有効活用するために平成28年度に繰り越した。
平成28年度に実験に必要な消耗品の購入に充てる。
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