研究課題
多発性骨髄腫は造血器悪性腫瘍の一つであり、根治をもたらしうる治療薬が未だ不在の難治性疾患である。高度難治性の原因としては、染色体異常や遺伝子異常、分子異常の多様性が高度であることが挙げられるが、くわえて、このことは普遍的な治療標的分子の童貞が困難であることの原因ともなってきた。本研究では、10種類以上の染色体異常や遺伝子異常のパターンが異なる多発性骨髄腫細胞株を詳細に検討することで、これらの分子生物学的に不均一なコホートにおいても共有される分子異常を特定し、その細胞生物学的な意義を明らかにすること、くわえて臨床検体での解析を加え、臨床的意義、すなわち、予後推定におけるバイオマーカーとしての意義と治療標的分子としての可能性を追求することが目的である。こうしたスローガンのもと、本研究において我々は、セリン・スレオニンキナーゼであるPDK1 (PDPK1)が、MM細胞株において恒常的に活性化しており、骨髄腫細胞においてRSK2 N末端、AKT両分子の活性化を制御していることを見出した。つまり、各種の遺伝子変異や染色体異常、ならびにサイトカインなどを介した腫瘍環境由来シグナルの多くが重複してRSK2とAKT を集約的に活性化するが、この過程において最終的にPDK1による活性化が必須であり、PDK1がRSK2、AKTの両者を制御することで多発性骨髄腫の病態形成を支配していることが想定され、実際、さらに下流の分子であり骨髄腫の病態形成に重要な役割を担うcyclin D、MYC、MCL1,IRF4などの多くの分子を制御することで多発性骨髄腫細胞の生存と増殖を支配することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究により、我々は既にPDPK1が約90%以上の骨髄腫症例で活性化しており、くわえて予後と関連することを見出した。また、治療標的となるべく、骨髄腫細胞の生存や増殖を支配することを明確にした。こうしたことから、現在の研究の進捗は順調であり、くわえて今後も計画通り、さらなる応用に向けた研究を推進することが妥当であることを示している。
1.骨髄腫瘍環境における骨髄腫細胞のPDPK1発現、制御の意義の検討を行う。具体的には患者骨髄由来の骨髄間質細胞を、CD138陰性分画のプレート付着法により単離し、MM細胞株との共培養によるin vitro骨髄擬似環境モデルを作成し、PDPK1の骨髄腫瘍環境における機能的意義を明らかにする。この際、MMではBMSCにも形質変異が生じていることが近年知られており、本検討に用いるBMSCの起源としてMM患者由来細胞を用いることが重要である。2.In vivo MMモデルにおけるPDK1の機能的意義の検討を行う。現在、in vivoで継続的に使用可能なPDK1阻害小分子化合物は明らかでないため、治療モデルの確立は困難である。一方、RNAiによる治療モデルでは安定的drug deliveryモデルが未確立である。そこで、以下の方法により、骨髄環境におけるPDPK1のMM病態形成の意義について明らかにする。3.PDPK1活性化メカニズムの解明を行う。特にnon-coding RNAの関与が示唆されており、重点的に検討を行うとともに、治療応用について検討する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Cancer Research
巻: 74 ページ: 7418-7429
10.1158/0008-5472.CAN-14-1420.