研究課題
多発性骨髄腫細胞の薬剤耐性獲得に鍵となるヒストンH3の27番目のリジン(H3K27)へのメチル化抑制を介した機構の解明を進めた。これまでの解析の結果、骨髄腫細胞ではストローマ細胞との接着時、PI3K/Akt/IGF-1Rキナーゼ経路の活性化によりEZH2がリン酸化されて不活性化、遺伝子発現抑制に働くヒストン修飾であるH3K27のメチル化が抑制されて、抗アポトーシスに働くBcl-2、IGF-1などの発現が亢進し、耐性を獲得する可能性を明らかにした。H28年度はその検証のため、short hairpin-RNA(sh-RNA)を用いたloss-of-function 解析を進めた。まず、EZH2のリン酸化を担うPI3KやAKT、IGF-1R、及びH3K27メチル化抑制の下流で発現亢進するIGF-1に対するsh-RNA導入により、それぞれの発現をノックダウンさせた骨髄腫細胞株亜株を樹立した。これらの亜株をストローマ細胞との接着下において抗がん剤を作用させたが、有意な薬剤耐性は見られなかった。これまでの解析の結果から、PI3K/Akt/IGF-1Rキナーゼ阻害剤が、EZH2リン酸化を抑制し、薬剤耐性克服にも有効なことを明らかにしている。従って、ストローマ細胞との接着を介した薬剤耐性獲得には、PI3K/Akt/IGF-1Rキナーゼ経路の活性化、その下流でEZH2リン酸化によるH3K27メチル化抑制、及びIGF-1発現の亢進が鍵となっていることを明らかにした。なお本研究は、多発性骨髄腫の薬剤耐性におけるエピジェネティク制御メカニズムを明らかにした初めての報告である。
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