研究課題
RCSD1-ABL1のトランスフォーメーション活性はBCR-ABL1分子のトランスフォーメーション活性と違った機構が想定されている。この違ったRCSD1-ABL1のトランスフォーメーション活性を解明すべく我々はRCSD1-ABL1陽性ALL患者細胞から2種類(RCSD1 exon3の有無の2種類;90 bpの差がある)のRCSD1-ABL1遺伝子のクローニングに成功した。更にこの2種類のRCSD1-ABL1遺伝子をレトロウイルスベクター経由でマウスのリンパ系幹細胞株BaF3に導入したところ、RCSD1遺伝子のexon3とABL1遺伝子のexon4の融合遺伝子のみがBaF3のIL3依存性から脱却しIL3非依存性に自立増殖能を獲得していることを確認した(in vitro確認)。したがってこのRCSD1 exon3に相当する30アミノ酸はRCSD1-ABL1遺伝子のトランスフォーメーション活性に重要な配列であることが確かめられた。更にこのRCSD1遺伝子のexon3とABL1遺伝子のexon4の融合遺伝子を導入しBaF3をSCIDマウスに移植すると有意差を持って(P=0.02 VS control, P=0.03 VS RCSD1 exon2とABL1 exon4の融合遺伝子を導入したBaF3)マウス生存期間が短縮していることも確認した(in vivo確認)。現在、この2種類のRCSD1 exon3に相当する30アミノ酸の有無によるRCSD1-ABL1遺伝子の下流シグナルを同定すべく、それぞれのBaF3細胞とチミジンキナーゼ活性が亢進する分子を同定中である。
2: おおむね順調に進展している
RCSD1-ABL1陽性ALL患者細胞から2種類のRCSD1-ABL1遺伝子のクローニングに成功した。更にこの2種類のRCSD1-ABL1遺伝子をレトロウイルスベクター経由でマウスのリンパ系幹細胞株BaF3に導入に成功し、RCSD1遺伝子のexon3とABL1遺伝子のexon4の融合遺伝子のみがBaF3のIL3依存性から脱却しIL3非依存性に自立増殖能を獲得していることを確認した。したがってこのRCSD1 exon3に相当する30アミノ酸がRCSD1-ABL1遺伝子のトランスフォーメーション活性に重要な配列であることが確かめられた。更にこのRCSD1遺伝子のexon3とABL1遺伝子のexon4の融合遺伝子を導入しBaF3をSCIDマウスに移植すると有意差を持って(P=0.02 VS control, P=0.03 VS RCSD1 exon2とABL1 exon4の融合遺伝子を導入したBaF3)マウス生存期間が短縮していることも確認した(in vivo確認)。現在、このRCSD1-ABL1遺伝子の下流シグナルを同定すべく、それぞれのBaF3細胞とチミジンキナーゼ活性が亢進する分子を同定中であり、おおむね順調に進展していると考えている。
1.gene expression profile解析により増殖に関わるシグナル分子を同定し明かにする。我々はp190BCR-ABL1cDNを有しており同様にBaF3細胞にレトロウイルスベクター経由で導入しその癌可能を解析すると同時にこの2種類のRCSD1-ABL1および p190BCR-ABL1cDNAをgene expression profile解析により網羅的に関係分子シグナル機構を解明する。2.RCSD1-ABL1cDNA遺伝子導入マウス並びにRCSD1-ABL1cDNA遺伝子発現細胞移植B-ALLモデルマウスの作成を行いRCSD1-ABL1cDNA遺伝子発現B-ALLモデルマウスの表現型を解析し、マウス細胞を通して増殖に関わるシグナル分子を同定する。3.RCSD1-ABL1遺伝子由来蛋白の分子標的薬を次の2方法により開発する。我々はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAI)であるpivaloyloxymethyl butyrateやRCSD1-ABL1に競合する細胞膜通過ペプチドにこの30アミノ酸を付加する特殊なペプチドで選択的にこのRCSD1-ABL1融合遺伝子陽性白血病細胞株がアポトーシスに導かれることも確認している(preliminary data)。今回の研究期間内でRCSD1-ABL1発現造血幹細胞移植マウスや、RCSD1-ABL1発現遺伝子導入マウスに投与し治療効果をin vitroならびにin vivoで検証したい。これらの基礎実験を含むトランスレーショナル解析が進めば臨床試験の可能性も追求したい。
人件費が今年度必要とならなかった。
人件費を念頭に研究物品費を次年度に計画したい。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件)
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