研究課題
RCSD1-ABL1陽性急性リンパ性白血病(ALL)は極めて予後不良な疾患である。我々はRCSD1-ABL1陽性ALL患者細胞からRCSD1 exon3(90 bp)の有無で2種類のRCSD-ABL1が発現していることを明らかにした。この2サブタイプRCSD1-ABL1cDNAのクローニングに成功し、この2種類のRCSD1-ABL1cDNAをMOCK細胞に遺伝子導入し gene expression profile解析により遺伝子発現に相違のある関係分子シグナル機構を同定し明かにした。Tyk2分子にこの2種類で発現の差が有意にみられた。また、RCSD1-ABL1cDNA遺伝子発現B-ALLモデルマウスの作成を行った。以上のin vitroおよび白血病細胞移植マウス実験によりRCSD1-ABL1遺伝子の白血病化を決定づけているのはRCSD1遺伝子のexon2とABL1遺伝子のexon4の融合遺伝子(2952bp)とRCSD1遺伝子のexon3とABL1遺伝子のexon4の融合遺伝子(3042bp)の差である30のアミノ酸が重要な役割を担っていると考えられた。我々の研究の目的の一つにはこの90bpの塩基対=30のアミノ酸に注目しながらシグナル伝達系も含めこのRCSD1-ABL1の白血病化の分子機構の中にTyk2分子がRCSD1-ABL1を介して発現が亢進しSTAT2分子のリン酸化を促進することを解明した。2サブタイプ白血化能と機能ドメインをin vitroで明らかにし、RCSD1-ABL1遺伝子の白血病化に重要な90bpの塩基対が血液細胞の増殖に必要である。さらにRCSD1-ABL1cDNA遺伝子発現細胞移植B-ALLモデルマウスの作成を行い90bpの塩基対の多いRCSD1-ABL1cDNA遺伝子発現B-ALLモデルマウスの作成に成功し表現型を解析し、マウス細胞を通して増殖に関わるシグナル分子がTyk2及びSTAT2であることが解明された。International Journal of Recent Scientific Research (2015 IF5.9)に採用され印刷中である。タイトルは「The Kinase-Activating Pathways and Sensitivities to TKIs Vary between Fusion sites of RCSD1-ABL1 in Ph-like Acute Lymphoblastic Leukemia」である。
2: おおむね順調に進展している
RCSD1-ABL1陽性急性リンパ性白血病(ALL)の原因遺伝子であるRCSD1-ABL1 cDNAを2種類クローニングするのに成功した。また、この2種類で癌化能がまったく違うことも明らかにできた。癌化能はTyk2リン酸化によりSTATのリン酸化が亢進され癌化および自己増殖が亢進すると考えられた。これはRCSD1-ABL1cDNA遺伝子発現細胞移植B-ALLモデルマウスの作成にも成功し、シグナル伝達系であるTyk2リン酸化によりSTATのリン酸化が亢進されることも明らかにできた。
RCSD1-ABL1遺伝子由来蛋白の分子標的薬を次の2方法により開発する。我々はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAI)であるpivaloyloxymethyl butyrateやRCSD1-ABL1に競合する細胞膜通過ペプチドにこの30アミノ酸を付加する特殊なペプチドで選択的にこのRCSD1-ABL1融合遺伝子陽性白血病細胞株がアポトーシスに導かれることも確認している(preliminary data)。今回の研究期間内でRCSD1-ABL1発現造血幹細胞移植マウスや、RCSD1-ABL1発現遺伝子導入マウスに投与し治療効果をin vivoで検証したい。これらの基礎実験を含むトランスレーショナル解析が進めば臨床試験の可能性も追求したい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
International Journal of Recent Scientific Research
巻: 7 ページ: 10-20
Leukemia
巻: 60 ページ: 545-554
10.1182/blood-2015-05-646240