研究課題
低酸素環境(1% O2)で長期間安定して生存可能な多発性骨髄腫細胞株(HA-MM)を樹立し、その性状解析を行った。HA-MM株は幹細胞マーカー(Oct3/4、Sox2、Nanog、等)のmRNAを、Normoxia環境下で生存する親株に比して有意に高発現しており、免疫不全マウスを用いた移植実験において、HA-MM細胞はより少数の細胞での定着を認め、さらに二次移植実験においても親株に比べ生着率が高く、MM幹細胞の性状を有することを明らかにした。当初、MMの治療標的として有効であると報告してきたβ-カテニンに注目しシグナル解析を行ってきたが有意な差は認めなかった。他のシグナルとして、TGF-βシグナルに注目し検討したところ、下流のSmad2のリン酸化亢進を認め、MMにおいてはTGF-β/Smadシグナル系がMM幹細胞維持に関与することが示唆された。そこでまず、SB化合物処理により、細胞周期に変化が起こるかを解析したところ、わずかではあるがSB化合物処理にてG0期分画の減少をもたらすことが明らかとなった。
3: やや遅れている
仮説を立てたHA-MM細胞株でのWnt経路の活性化ではなくSmad経路の活性化のMM幹細胞維持機構への関与を示唆する結果を得たため、本経路分子をRNA干渉でノックダウンし解析を進めてきたが、血球細胞であるMM細胞への導入効率が悪くその改善に時間を要している。また低酸素適応MM細胞株の幹細胞性の検討においては、模擬骨髄作製の手技確立に時間を要することにより、若干の進捗の遅れがある。
①基本的に平成26年度の研究を継続させ、低酸素適応MM細胞株におけるWnt経路以外の幹細胞維持シグナルとしてのSmad経路の解析を行う。骨髄間質細胞との共培養系を併用し、低酸素と間質細胞接着による幹細胞維持機構の関連分子をウエスタンブロッティング、およびreal-time RT-PCR法にて解析する。引き続き、候補分子をRNA干渉法やその機能阻害化合物を用いることで、HA-MM細胞の幹細胞性の変化を検証し、MM幹細胞の治療標的分子を明らかにする予定である。②新たな標的分子として、活性酸素種の消去に関わるグルタチオン代謝を制御するC7orf24(γ-グルタミルシクロトランフェラーゼ)の発現を、親株のMM細胞株と幹細胞性を有するMM-HA細胞株で比較検討する。
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