研究実績の概要 |
1. 造血幹細胞移植マウスの作成と血球貪食の評価:B6マウス同士の移植(同系移植)、B6マウスへのBALB/c 、骨髄の移植(同種移植)、B6マウスへのBALBの骨髄と脾細胞の移植(GVHD)マウスを作成した。生存率、キメリズム解析、体重測定、GVHDスコアを用いて移植評価を行ない、それぞれの移植モデルが安定的に作成されていることを確認した。移植の種類によらずすべての移植マウスで血球貪食が起きていることを確認した。 2. 血球貪食症候群(HPS)マウスモデルの作成:各種移植後マウスに種々のTLRリガンドを投与した。TLR3, TLR4, TLR7/8, TLR9のリガンド、それぞれの投与で血球貪食の増加が認められた。TLR9リガンド(一本鎖DNA, CpG-ODN)の投与で血球貪食の程度が高度であったことから、以後、CpG-ODNを中心に検討を進めた。移植マウスではCpG-ODNの1回投与により、発熱、脾臓サイズの増大、血球減少、血球貪食が認められ、HPSが発症することを確認した。 3. HPSマウスのサイトカイン産生動態:移植マウスにおいて、CpG-ODN投与後、TNF-α、IL-6、IFN-γの順に急速に増加した。また、遺伝子改変マウスを用いた結果から、産生されるサイトカインはレシピエント由来であり、貪食細胞はドナー由来の単球由来樹状細胞であることを確認した。 4. HPSに対するサイトカイン中和療法:CpG-ODN誘導HPSに対し、抗TNF-α抗体によるHPS阻害を認めた。抗IFN-γ抗体も有効であった。 以上、本研究は、TLRリガンド刺激が移植マウスにHPSを惹起することを確認し、その主な原因がTNF-αによるサイトカイン血症であること、抗TNF-α抗体によって治療可能であることを初めて示すものである。
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