研究課題
造血幹細胞移植後の血球貪食症候群(HPS)マウスモデルを構築してその病態を解析し、有効な治療法について提言した。HPSは発熱、肝脾腫、血球減少、高フェリチン血症などを特徴とする予後不良の疾患である。標準的治療法は確立されていない。本研究では、ワイルドタイプ(WT)および遺伝子改変マウスを用いて自家移植(同系移植)、同種移植、移植片対宿主反応(GVHD)を呈するマウスを作成した。それらのマウスに感染モデルとしてTLR9リガンド(一本鎖DNA、CpG-ODN)を投与して血球貪食症候群(HPS)を発症させ、HPSマウスのサイトカイン産生動態、貪食細胞の由来と性質等について解析した。また、種々の抗体を用いて、HPSに対する有効なサイトカイン中和療法について検討した。その結果、造血幹細胞移植後は、移植の種類によらず血球貪食が常態として起きていることを確認した。移植後マウスでは、TLR9リガンドの1回投与によって、発熱、脾臓サイズの増大、血球減少、血球貪食が認められ、HPSが発症することを確認した。移植マウスにおいてTLR9リガンド投与後、TNF-α、IL-6、IFN-γの順でサイトカインが急速に増加した。サイトカイン産生細胞はドナー由来、貪食細胞はレシピエント由来であった。HPSに対するサイトカイン中和を行った。その結果、抗TNF-α抗体による劇的なHPS阻害を認めた。抗IFN-γ抗体も有効であったがその効果は限定的であった。以上、本研究によって、造血幹細胞移植後のHPSに対して、抗TNF-α抗体療法が有効であることが世界で初めて実験的に明らかとなった。
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Biol Blood Marrow Transplant
巻: 22 ページ: 627-636
10.1016/j.bbmt.2015.12.018.