研究実績の概要 |
本研究の目的は、難治性虚血性疾患に対する新しい細胞治療の開発である。我々はこれまでに、NotchリガンドであるJagged-1を過剰発現させた骨髄有核細胞が、虚血組織において強力な筋・血管再生効果を有することを示してきた。しかし遺伝子導入細胞を用いた治療法は、安全性の担保において臨床応用のハードルが高い点が課題であった。一方、可溶性タンパクを用いた方法は、細胞膜上でclusteringしたJagged-1を用いる場合と比較して効果が著しく劣る。これらの課題を克服するため、我々は無核細胞を用いた遺伝子導入細胞治療を考案した。すなわち①Jagged-1遺伝子導入巨核球を作成し、②これらが分化・脱核する過程で導入遺伝子を排除させ、③Jagged-1を高発現した血小板を精製し、④虚血局所に投与する手法である。本研究はそのproof-of-conceptを得るための基礎研究である。
平成27年度は、DNAVEC社CytoTune-iPSキットを用いて、ボランティアドナーの末梢, 核球からヒト由来iPS細胞を作成し、導入に用いたセンダイウィルスが排除されたクローンの樹立に成功した。また既報の方法(N. Takayama et al, JEM 207, 2817, 2010)を踏襲して巨核球および血小板を作成した。しかしTET-ON Lentivirusシステムによる遺伝子導入が不成功であったため、ゲノム編集の手法を用いて、コンディショナルにJagged-1を発現するシステムを作成することに成功した。しかし、動物実験に用いるために十分量な血小板を得ることが現在のところできていない。
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