研究課題/領域番号 |
26461441
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
俵 功 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80378380)
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研究分担者 |
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00242967)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GVHD / テネイシン-C |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、同種造血幹細胞移植後に発症する合併症である移植片対宿主病(GVHD)、とりわけ慢性GVHDにおける臓器線維化機構を解析するとともに、新たな制御モデルの開発を試みることである。具体的には、マウスモデルを用いて慢性GVHDの特徴である移植後組織・臓器線維化メカニズムを、細胞外マトリックスタンパク質・テネイシン‐C(TN-C)に着目して解析するとともに、臨床検体を用いて移植後TN-Cの動態と慢性GVHD臨床病態との関連を検討し、TN-Cを標的とした慢性GVHD制御法開発の可能性を検討することである。
本研究初年度の平成26年度には、マウス骨髄移植モデルを用いてGVHD標的臓器、とりわけ皮膚および消化管内におけるTN-C発現を検討した。またTN-Cノックアウトマウスを用いた骨髄移植モデルを用いて、TN-C発現とGVHDとの関連を検討した。また同モデルを用いて、移植後病態におけるTN-C産生細胞が、ドナー由来あるいはレシピエント由来であるかの検討を行なったところ、主たるTN-C産生細胞はレシピエントに由来することが明らかとなった。
平成27年度には、マウス骨髄移植モデルを用いて初年度に得られた知見を確認するとともに、臨床検体を用いたTN-Cの測定を開始した。現時点ではマウス骨髄移植モデル実験から考えられた、移植後病態におけるTN-Cの役割がヒトでも共通していることを示唆する所見を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では初年度(平成26年度)が終了した時点では、マウス骨髄移植モデルにおいてGVHD標的臓器内のTN-Cが継時的に変化することが明らかとなった。また移植後個体において、主たるTN-C産生細胞がレシピエント由来であることも明らかとなった。これらの結果は、移植後GVHD標的臓器の修復にTN-Cが関与することを示唆するものであり、初年度の目的はおおむね達成したと考えている。
平成27年度はマウスモデルで得られた知見を確認するとともに、臨床検体を用いた解析を開始した。臨床検体の解析は50症例を目標とし、移植後TN-Cの継時的変化とGVHD発症様式の相関を検討する予定であり、平成27年度も目標をおおむね順調に達成したと考えている。
ただし、当初考えたものとは異なる移植後病態におけるTN-Cの役割が考えられるようになってきており、より多面的な解析が必要になってきている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の3年目となる平成28 年度は、26年度、27年度に引き続きマウス骨髄移植モデルを用いて、移植後GVHD標的臓器内のTN-C発現とドナー由来免疫細胞浸潤との関連を検討し、TN-CのGVHD病態および組織修復への関わりを明らかにしてゆく。また臨床検体(血清・血漿)を用いた研究は、50症例を目標に移植後TN-Cの経時的変化とGVHD病態との関連を検討し、マウスおよびヒト移植後病態におけるTN-Cの役割の類似性、相違性を明らかにする。さらにTN-CがGVHD制御の標的となる可能性についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(平成27年度)中の研究は概ね予定通りに進めることができたが、所要額に対し支出額が低かった理由は、試薬の価格が予定額より若干低かったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)も計画通り研究を進め、次年度使用額は抗体等の試薬やプラスチック製品、実験動物の購入費に充てる予定である。
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