研究課題
造血細胞移植後の予後を左右する上で重要とされるGVHDの治療は重症な場合、いまだ確立された方法はない。本研究ではELISPOT法(Enzyme-linked immunospot assay)という手法を用い、GVHD の発症予測および診断において造血細胞移植の臨床に応用を行ってきた。従来、慢性GVHDの中心的働きをする細胞はT細胞やB 細胞と考えられていたが、新たに単球が重要な役割を担っていることがELISPOT法を使い証明することができた。慢性GVHDでは主に抗炎症性単球がIL-10を産生し、障害された標的臓器の修復に関与していることがわかった。またマクロファージにはM1型(炎症性)とM2型(調節性)が存在し、それぞれを支配している転写因子としてIRF-5およびIRF-4が報告されている。これらの知見を元に、M2マクロファージを用いたGVHDの新規治療法の開発を行った。マウス骨髄細胞よりGM-CSFおよびG-CSFのサイトカインで培養することによりそれぞれM1およびM2の2種類のマクロファージの誘導が可能であった。これら2種類の誘導されたマクロファージを用いて、作成したGVHDモデルにおいて細胞治療の効果を検証し、標的臓器の免疫学的評価行った。結果として、M2マクロファージは致死的GVHDを抑制し、生存率の向上につなげることが可能であった。一方、M1マクロファージはGVHDを悪化させる要因となった。GVHDのきたしたマウスの組織では腸管、肝臓、皮膚のHE染色標本において明らかにGVHD所見を呈しており、死亡原因がGVHDであることを裏付けた。また、これらの病態には転写因子であるIRF-4の発現が重要であることが証明された。
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J Pediatr Hematol Oncol
巻: 39 ページ: 6-9
10.1097/MPH.0000000000000721
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