研究課題
慢性GVHDに対して、IL-2を低用量投与することにより、Tregを選択的に増加させることで、免疫寛容を導入しうることが臨床試験の結果から示されている。しかしながら、Tregの増加はGVL効果をも減弱させることが懸念され、IL-2療法中のTregホメオスタシスを正確にコントロールする技術の開発が必要である。われわれは、マウスに低用量IL-2を投与すると、CD62L+CD44+のCentral Memory表現型を有するTregが増幅すること、このTregはPD-1を高発現すること、さらにこのPD-1経路を遮断すると、IL-2療法中のTregホメオスタシスが破綻し、Treg数が減少することなどを明らかにした。さらに、このマウス実験の結果に基に、ヒトTregにおけるPD-1経路の意義について検証した。慢性GVHDに対する低用量IL-2試験の臨床検体を解析したところ、IL-2投与開始後4週目にTregにおけるPD-1発現はピークに達した。このPD-1発現上昇はTregにのみ観察され、通常CD4T細胞では上昇が見られなかった。その後に、IL-2療法による臨床効果がみられた患者検体とみられなかった患者検体を比較したところ、臨床効果がみられた患者群において、よりTreg特異的にPD-1上昇がみられる傾向が確認された。これらの結果より、IL-2に富む炎症環境下におけるTreg恒常性の維持には、PD-1経路による抑制性コントロールが重要な役割を果たしていることが示唆された。特に、臨床検体解析において、IL-2投与後に慢性GVHDが改善した患者群において、Treg上のPD-1発現上昇が顕著であった結果からは、TregのPD-1発現は、Treg恒常性を標的とする免疫療法の開発において、そのバイオマーカーとなる可能性を示された。
すべて 2017
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Blood
巻: 129 ページ: 2186-2197
10.1182/blood-2016-09-741629