現在世界的に広く実施されている白血病に対する同種造血幹細胞は、抗白血病効果がGraft-versus-host disease (GVHD)に依存しており、しばしば重篤なGVHDを来すことが問題となっている。この課題を克服し、GVHDに依存しなくGraft-versus-leukemia (GVL)効果のみ期待できる新規造血幹細胞移植療法を開発する目的で研究を遂行した。つまり、HLA-A24拘束性WT1-TCR遺伝子を臍帯血から純化したヒトCD34陽性造血幹細胞に遺伝子導入し、理化学研究所石川文彦博士との共同で開発したHLA-A24トランスジェニックNSGマウスに移植した。その後、継時的にマウス体内で分化するヒトT細胞の形質と機能を検討した。 まず経時的にマウス体内で分化するヒトT細胞の機能を解析したところ、WT1特異的HLA-A24拘束性CTLがマウス体内で分化増殖することがin vitro実験系で示された。さらに、マウス体内で分化増殖したこれらのヒトT細胞はHLA-A24拘束性にヒト白血病細胞を殺傷することが確認された。さらに、ヒト白血病細胞を移植した免疫不全マウスでの白血病細胞増殖も抑制することが示された。 これらの結果から、造血幹細胞へのがん特異的TCR遺伝子導入による新たな造血幹細胞移植療法の可能性が示された。
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