研究課題
「造血幹細胞移植後において、MEK阻害剤トラメチニブは移植片対宿主病(Graft-versus-Host Disease: GVHD)を抑制するが、抗腫瘍免疫(Graft-versus-Tumor Effects: GVT効果)を温存する」という作業仮説に基づき、マウスモデルとヒト検体での検証を重ねた。B6マウスの骨髄とT細胞をBDF1マウスに輸注する系、B10.D2マウスの細胞をBalb/cマウスに輸注する系、さらにB6からBDF1への移植系でP815腫瘍細胞株を輸注する系の、計3モデルで実験を行った。いずれもトラメチニブはGVHDをよく抑制しただけでなく、P815を用いた系ではGVT効果を温存することが示された。この結果はタクロリムスの投与時にP815の増殖とマウスの腫瘍死がみられたのと対照的で、トラメチニブの優位性が証明されたと考えている。上記に加え、最終年度はxenogenic GVHDモデルでトラメチニブの投与を行った。すなわち免疫不全マウスにヒト単核球を輸注してトラメチニブを投与したところ、有意なGVHDの抑制と生存延長効果が示された。現在は各細胞サブセットを標的とした詳細な解析を行っている。続いて実際の移植患者末梢血を用いて、T細胞におけるERK1/2のリン酸化レベルを解析した。CD4 T細胞におけるERK1/2のリン酸化レベルはGVHDの発症に伴って亢進し、治療による緩解時に低下することが判明し、GVHD診断のバイオマーカーとなり得るか、検証中である。マウスモデルの実験結果は2016年7月にJCI Insight誌に論文として掲載され、多くのメディアで報道された。研究代表者は第7回日本血液学会国際シンポジウムのプレナリーセッションでも招請講演を行い、高く評価された。現在はヒト造血幹細胞移植でトラメチニブを用いた治験を開始すべく、準備中である。
(1)論文発表のプレスリリース記事(2)現所属部局作成のウェブサイト(3)旧所属部局作成のウェブサイト
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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