研究実績の概要 |
1) Foxf1aコンディショナルノックアウトマウスの作製:相同組換えが生じたES細胞株から最終的にFoxf1a flox/floxマウスが産出された.その後,巨核球,血小板特異的Cre発現を可能とするPF4-Creマウス,造血幹細胞での誘導性Cre発現を行うMx-Creマウス,および,心筋細胞特異的なMyh6-Creマウスと交配し,種々の臓器特異的Creマウスを得ている.さらにCAG-Creマウスとの交配により,Foxf1a+/-マウスを作製した. 2) 各組織,臓器におけるFoxf1aの発現:マウス各臓器からmRNAを採取し,Foxf1aの発現をリアルタイムRT-PCR法により検討した.様々な臓器にFoxf1aの発現を認めるが,特に肺組織へのFoxf1aの発現が極めて高かった.骨髄はFoxf1aの発現が低いものの,FACSにより分類したところ,主要な細胞であるリンパ球や骨髄球での発現は低く,造血幹細胞(c-kit+, Sca1-, Lineage-),および巨核球への高発現を認めた. 3)造血器悪性腫瘍での発現と機能:ヒト造血器悪性腫瘍由来細胞株(HL60, K562, Meg01,UT-7/TPO)ではmRNAの発現を認めなかったが,Foxf1aを強発現させるとMeg01やUT-7/TPOなどの巨核芽球系培養細胞で高度のアポトーシスを誘導した.他のK562やHL60などの細胞株では,この現象は認めず,Foxf1aの巨核球系細胞に特異的な役割も想定される.巨核芽球系急性白血病(M7)は現在も予後不良の疾患群であるために,このFoxf1aの生理機能を明らかにすることにより,同分子を標的とした新たな治療戦略に結びつく可能性がある.
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